5-4
「現時点で明らかになっていることがまだ少ないので憶測が混じることがありますが、そこは大目に見てください。ではまず、彼らが送り込む機械兵について分かっていることを話します。体長は約二メートルで人間を模したような頭や手足がついています。動きは俊敏で地球人の並みのアイテル移動でも危険が伴われるくらいです。戦闘に参加可能な人間は本人の意思にもよりますが限られることでしょう。生命の危険に関わることなので慎重に対応していきたいですね。次に機械兵の行動目的についてお話しします。これは僕の個人的な見解なのですが、この星に存在するなにか重要なものを探しているのではないでしょうか。各々が独立して動いている点から見ても広範囲を調べようとしている機械的心理が読み取れます。この先彼らの求めているものと接触を許してしまった場合、戦況がどう変化していくのかは想像もつきません。素直にお帰りいただけると嬉しいのですが、なにせお客は頭の固い方達ですからね。一筋縄ではいかないでしょう。なにはともあれ彼らのことをもっと知っておかなければなりませんね。例えば先程レインさんの話にあった都市防衛に役立つ情報なんかもその一つに挙げられると思います。他都市の知り合いから聞いたところによりますと、どうやら機械兵はなんらかの条件が揃うことで地上の探索を終了することが分かっています。しかもある時間を境に機械兵全体が撤退する事実から、あれには活動限界があると推測できます。原動力が有限である可能性が高いというわけです。いずれにしても今後の活動時間を細かく調べていけば出現時間を先読みできることでしょう。彼らの行動を事前に把握しておけば討伐部隊を都市から離れたところに待機させることができるので、我々の居場所を特定される危険は回避できます。あとは実戦を重ねながら有益な情報を集めていき、彼らよりも優位に立つための手立てを講じていきたいというのが僕の考えです」
腕を組んで熱心な表情を浮かべていたメイルはなにか不満を言いたげな様子だった。他の人には考えつかない方法や発想を胸の中に隠しているのだろうか。
私にはそれが彼との思想の違いを明るみにしてしまう悲観的な材料になるような気がして怖かった。そう思ってしまうと口は意識的に閉じられて、彼らの思うがままの未来が切り開かれてしまう。
今の私にとって戦争に負けることよりもメイルに嫌われないことが重要だった。この胸に刻まれた取り返しのつかない傷口を維持してくれるのは彼の他にはいなかったからだ。
必要とされなくてもいい。せめて近くにいることを許してくれる関係を続けられればよかった。そのためだったら異星文明だろうが機械兵だろうがなんだって相手になってやる。
それとシンクライダー。この人の目は侮れない。さっきからずっと私のほうをちらちらと見ている。
こちらの見て見ぬ振りをむしろ楽しんでいるかのような両頬の笑窪。この人もレインと同等のアイテル能力者だとしたら、私の違和感にもう気づいているはずだ。
距離を目算してみる。
すると彼はアンチアイテルの適用領域の境界線をしっかりとまたいでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます