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なんとなく現状が見えてきた。奴等三人はカウザとかいう異星人の存在を予め知っていて行動を共にしている。リムスロットに行く予定だと話していたからきっとそこで防衛かなにかの体制を整えるつもりなのだろう。
そしてマーマロッテ『レシュア王妹殿下』にはなにか裏の事情がある。
あのやつれた表情は嬉しさから形成されたものではない。どことなくある種の諦めを通過した顔をしている。となると、あの城でなにかがあったのだろうか。
俺の身体は無意識に詳細を知りたがっていた。でも奴等との関わりをなるべく避けたいとも思っていた。あの元老院を敵視しているのだ。そんな奴等に付き纏っていたらきっと厄介ごとに巻き込まれるに違いない。
それと地球に飛来してきた異星人だ。そいつらは俺達をどうしたいのだろうか。地球の土地を借りることが目的なら地球人に意味もなく危害を加えたりはしないのではなかろうか。
そういえば仮面女が妙なことを口にしていた気がする。ゼメロムがどうとか。
「おい、そこの仮面の人」
「なに、私のこと? 相手して欲しいの? レシュア、彼氏ちょっと借りてもいいかしら?」
ジャキ、ジャキ、と不気味に足を鳴らしてこっちに近づいてくる。首を軽く捻って視線を床に移すと、女の膝から下が人工的というか機械のようなもので覆われていて、それはおそらく『義足』だった。
もう少し頑張って全身を眺めてみると、女の骨格と身長が不釣合いであるように見えた。服装は全身が真紅で統一されている。足音だけでなくその容姿も負けず劣らず不気味だった。
「で、どうした青年。用を足したくなったのか?」
「さっき地下都市ゼメロムのこと話していたよな。なにかあったのか?」
「ああそれね。カウザの機兵隊が都市の内部に侵入してきたから爆破したのよ」
「は?」
仮面の女ことレイン・リリーは昨夜に起こったことを大まかに説明してくれた。最初の動機がどちら側にあったにしろ両者が争いごとを起こしたことは事実だったようだ。
「その機械兵というのは理由もなしに人間を襲ったのか?」
「分からない。でも喧嘩をふっかけてきたのはあっちのほうよ。同じ人間ならまだしも相手は言葉を発しない機械だから、ちょっと待ってとも言えないでしょ?」
「そういえばさっきの放送で入り口を閉鎖したとか言っていたな。地下都市にずっと隠れていれば争いは起こらないと思うか?」
「無理でしょうね。そもそもゾルトランスとカウザが関係をこじらせたんだし。私達が大人しくしていようとも戦争ははじまる。地下都市の封鎖も一時的な防衛に過ぎないわ」
「とばっちりを食うわけだ。それで? あんたらは戦うのか?」
「当然でしょ。王軍なんて当てにならないわ。まだ相手の戦力も把握してないはずよ。アイテル至上主義の頭でっかち集団ですもの」
「リムスロットに行くと言っていたな」
「そうよ。……ああさっき、ゲンマルお爺ちゃんが一緒について行きたいって言ってたわ。ここはもう駄目だからって。あなたはどうする?」
「自分の爺さん置いていけるかよ。それにここはもう駄目だ。畑仕事は続けられない。やったのがカウザの野郎だとしたらなおさらだ」
「あら、野菜ってもう作れるの?」
「なんだよそれ。流行りの謎かけか?」
「だってあなた『アイテル使えない』じゃない……」
そんなことはまだ一言もしゃべっていない。
仮面の下についている顔がきょとんとしていますと言わんばかりの反応を示してきた。俺はもう少し探りを入れようと黙ってみることにする。
「レシュアの側にいてもなにも感じなかったみたいだし、第一アイテルが使えたらわざわざこんなところに住まないでしょ? だから不思議だなって思ったの」
「俺、野菜食っても死なないから」
余計なことを口走ってしまった。よりによって素性も素顔も知らないお喋り女の前で。
こいつはきっといろんなやつに言いまくるだろうと後悔しながら、話の流れを変えようとあれこれ考えた。
「まーたメイル君ったら冗談がうまいんだから。地上で栽培したものをアイテルなしで食べられるわけないでしょう。あ、やっぱりアイテル使えるとか?」
逆にからかわれていた。誘導されていると言い換えてもいいだろう。
アイテルが使えない人間は独特の波長を持っていると昔爺さんから聞いたことがある。この女は想像以上に危ないかもしれない。
「残念ながら使えないよ。というわけで俺はあんた達の役に立ちそうもない。それとリムスロットに行っても入れてくれる保証はない。爺さんが無事に着くまでは一緒に行ってやるけど、あとは好きにさせてくれ。頼むから」
「……そう。ならいいわ。今晩泊めてくれるだけで十分よ。あなたとお爺ちゃんには本当に感謝してる。ありがとう」
……今日もらった命、大事にするからね。
「え?」
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