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 対応が遅かったのか裏口の扉が自動的に閉まる。

 異様な高揚と滑稽さに思わず笑ってしまった。同じ気持ちだったのか、デイミロアスとロッカリーザもつられて吹き出していた。


「第一関門、突破ですね」

「まだまだ油断できない状況ですから、気を引き締めて行きましょう」

「朝までが勝負ね。それまでどのくらい距離を稼げるか」

「このまま立っていても仕方ありません。急ぎましょう」



 外の景色を眺めた。

 城は丘の最も高いところに位置しており、ここから見ると辺り一面は森の上面を望むことができる。一番近い都市までは距離にして約二十キロメートル。遅くても今晩中には到着しておきたい。


 私達は真っ暗な森を突き進んだ。自分の身長よりも遥かに高い木々が延々と続く。かなりの速さで走っているので上を向くと空に輝く無数の星をちらちらと拝むことができた。

 古代にはこれらの小さな光よりもさらに大きな天体を見ることができたのだという。幼い時に女王から聞いた話だ。もしかしたらそれは彼女の冗談話だったのかもしれない。でも私はその話の内容と嬉しそうに語る女王の顔を今でも鮮明に記憶している。

 自分の顔を鏡で見るといつもあの頃を思い出した。そして、温かかった母との記憶を振り返りながら、孤独を明るい色で塗りつぶして日々を乗り越えてきた。



 ……もうこの世にはいない女王。

 ……しかし私が映る鏡の中で、今も生き続けている彼女。



 しばらく走り続けても追っ手の気配がないみたいなので私達は少し休憩することにした。

 息が切れて座り込む二人をよそにゆっくりと夜空を眺める。


「あれ?」


 思わず声に出してしまった。

 それに反応した二人が私の眺める方向を探す。

 なにかあったのかとロッカリーザは聞いてきた。だが返答する余裕がなかったのでそのまま空を見続けた。


 ……。

 空中を飛んでいてはいけないなにかが、そこにあったような気がしたのだ。


「あ、あれを!」


 デイミロアスが指差した先を目で追うとやはりそれらしきモノは宙に浮いていた。


「あんなもの、……軍の兵器でも見たことがないぞ」

「新兵器、みたいなものではないの?」

「我々を殲滅するためでしょうか。それにしては準備が良過ぎませんか。あんな不気味なもの、まるで戦争でもはじめるとでも言いたそうな形ですよ」


 ここから見えるだけでもそれは五つ確認できた。

 あれだけのものを作るとしたら相当な時間が必要なことくらい私にも分かる。少なくとも女王が生きていた頃にはとっくに計画は練られていたはずだ。

 そもそもアイテルを自在に扱える人間にあの金属みたいな塊がなんの役に立つというのだろう。やはり違和感しか覚えない。



 あの『人間と同じ形をした塊』は、どうして空を飛んでいるのだろうか。


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