11月19日 根雪

 雪が積もってた。まだ根雪にはならないだろうけれど、というか根雪という表現自体馴染みが薄いのではないだろうか。

 根雪というものを説明するならば、春が来るまで溶けない雪、と言えば正しいのだろうか。僕にもよくわからない。多分そういうことだと思う。まだこの時期に振るような雪が根雪になることは稀で、今は何日か路上に姿を残すことができていてもやがて消えてしまう。根雪は春までずっと残っているのに、彼らは早すぎたのだ。もっとも根雪だって長くても四ヶ月で溶けてなくなってしまうけれど、四ヶ月というのは人間にはうんざりするほど長いし、それは根雪にとっても同じだと思う。きっと根雪も飽きてうんざりしているだろう。お互いうんざりだ。酷い世の中だ。神の悪戯か。長々語ってみたところで何が言いたいかと言うと雪がそろそろ積もりそうで憂鬱だということだけなのだけれども。

 

 話は変わるけれども、今日ふと昔言われたことを思い出した。四年か五年くらい前に、僕と当時とても親しかった(と思う。自信がない。覚えていないし、断言すると様々な問題がある気がするが割愛)人物が僕をして言った言葉だ。曰く、僕は「自殺は本気ではするつもりがなかったのにうっかり死んでしまいそう」で、「浮気は迫られたら断り切れずにしてしまいそう」らしい。当たってるかどうかは知らないけれど僕はこの言葉が気に入っていた。僕はどうしようもないおっちょこちょいのお人よしに思われていたらしい。「君ってこんな人だよね」と言われてそれが自分のことを良く見てるんだなとか、良い視点だなとか、そんな一面があったなんて自分でも意外だったとか、そういう風に気づかされるとその人の機知や観察力や何よりも自分を見てもらえているということに嬉しくなる。だからきっと今もまだ覚えていて、根雪のように僕の底に降り積もって溶けないまま残っているのだろう、なんて。別に上手くはないなあ。


 最近また希死念慮が少しずつ芽生え始めてきて、とはいえ僕は多分心の底から真剣に死を望んでいるわけではないので、思い詰めた真面目な自殺とかはしないと思うけれども、ふと気づいたらなんとなく自殺のシチュエーションなんかを想像していることが多くなってきた。

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