第14話 トリップボックス・ネオ〜誰でも翔べる
──ホワイトワールド PTA本部 半年前
「仙道さん!見てください。ネオが完成しましたよ」
高階がハイテンションで仙道を呼んだ。あのライブ事件以来もう三ヶ月は経つが、ずっと不機嫌だったのだ。だが今日は機嫌が良いようだ。
「ネオって?」
「あれ?言わなかったでしたっけ」
高階の目が怖い。やはりまだ機嫌が悪いようだ。
「聞いたような……聞いてなかったような……」
「しょうがないですね。説明しますよ」
高階は睨むように、それでいて少し自慢げに説明を始めた。
「トリップボックス・ネオは画期的です。ボックスが翔ぶのではなく、ボックスに入っている人や物を翔ばすことができるのです」
「え?そんなことができるのか?」
「はい。トリッパーの能力の応用です。トリッパーは、人や物に触って一緒にパラレルワールドを移動することができます。あれは見方を変えると、触った人や物を指定したパラレルワールドの指定した座標へ翔ばしているということなのです。その仕組みを解明して、ボックスの中にある人や物を翔ばすことに成功しました。それがネオです」
「それはすごい。すごい発明じゃないか」
「はい。何がすごいって、これで仙道さんがボックスを戻すのを忘れても、私は家に帰れるってことですよ」
高階は睨みながら口の端でニヤっと笑った。仙道は固まった。
しばらくして、バー・アンカーに設置されていたトリップボックスが全部ネオに置き換えられた。仙道と高階の通勤時の『ボックス戻さない問題』は解消し、待たずにいろいろな世界に行くことが可能になった。パラレルワールドにある時空間研究所との人材交流も始まった。
バー・アンカーのシゲは、誰も気付かないが、ときどきアナザーと入れ替わっていた。誰も気付いていないが……
ネオは画期的だが、移動が楽になった分、誰が誰だか分からなくなる問題も浮上してきた。しかし、これはパラレルワールド間の人材交流を進めていくには避けて通れない課題である。過渡期の現在はしょうがない、新しいイノベーションが起きるときには何かしらの課題が少なからずあるものだ、みなそう思っていた。
そんな矢先、思ってもみなかった事件が発生した。
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