第11話 ヒカルの変身。
翌日登校したヒカルはほんとに世界が変わった雰囲気だった。
私の席は教室の前のドアから入って一番近い所、当然ヒカルは前から入って来た。
「おはよう」
昨日まで聞こえないくらいの挨拶だったのが、ニッコリ笑顔付きで、
「おはようでございます、
「ヒカル、様は要らないから、髪の毛もう少し可愛くして、、、止めようかな、誰かに取られちゃ困る、だけどもっと可愛くなれる、、、うーなやむ」
私がウダウダ言ってるとヒカルは私の真横に立ちじっとり私を見る、無言の圧力。
「座る?」
そう言って半分席を空ける、背は高いけど幅は無いので十分隙間が出来る。
横の座ると、ヒッシと抱き着いて来た(ああ今日も幸せ)。
そして、「私を見る者など蒼井さん以外おりません、蒼井さんの気に入る様にして下さいませ」
そうは言うがこれ以上可愛くしたら男子が放っておかないのは明白。
「触るな危険」と書き込む訳にいかないし(困った、でもこのままは可哀そう)。
「ちょっとだけ離れて」
顔を振ってイヤイヤ表現。
昨日から入れたままの鋏を取り出してヒカルの目の前でチョキチョキ。
「放課後で良いですのに」
「今日のヒカルを見たら誰がこんな事をって言い出すに決まってる、犯人は明白じゃない」
「ならばお願いします」
もうちょっと気楽に接して欲しいけどこういう態度も悪くない、っていうかなんでも良いと思ってしまう。
(惚れた欲目って言う事かしらね)
昨日みたいに手で掴めるほどは切らないのでティシュを一枚取り出して左の掌に載せ受け皿にして、チョキ、チョキ、とゆっくり丁寧に斜め切を矯正、自分で<やってしまった>って感じに。
鋏とティシュを机に置いて、
「もう可愛すぎ、絶対誰にも渡さない」
絶対後から突っ込まれる様なセリフを平気で言っちゃう私。
いよいよ危なくなりそうになった時ガラガラッと前のドアが開いた。
女子二人が一つの席でくっ付いてるのを見て一瞬「えっ」って表情をするがすぐ知らぬ顔をして通り過ぎていく。
「おはよう」
私が声を掛けた照れ隠しかな、ヒカルの髪を整えながら。
「あっおはっす」
彼は立ち止まり体の向きを変えず後ろ歩きで戻ってきてヒカルの顔を見て<ニマ>。
先制攻撃。
「だめよ、この子は私の物、恋人宣言しちゃう」
「お、すげ」
それでもヒカルにウインクして去っていった。
(
「あー先が思いやられる」
「大丈夫でございます、私は蒼井さん以外かぼちゃとジャガイモにしか見えません」
「女の子は?」
「着替えをするカラスでございましょうか」
「確かにカーカーうるさい、休日はインコかなカラフルになって」
それからも入ってくる子たちはヒカルを見てあっけに取られていた。
(あの後ヒカルはすぐに席を立っている)
お昼休み前の休み時間、やっぱり私の前に来ていたヒカルと私に女子グループの二人が来て、
「ねえ今日お昼一緒にしない」
と誘ってきたが、
「ゴメン、友部先輩に行きますって返事しちゃってるの」
って返したら、
「えー知らないの、ダメよ、あんな顔して女の敵よ、何人も泣かせて指名手配されてるって」
「でも約束してるし、今から断りに行けないし」
「じゃあ日輪さん置いていって来れば、絶対この子狙われてる」
(はいその通り、私らな構わないのね)
でもさすがヒカル。
「蒼井さん一人で行かせるわけには参りません、わたし武術の心得が御座いますから万一の時はお任せください」
「おー凄い子じゃん、猫かぶってたの、こんなに可愛い子って思わなかった、しかも武術ってすごーい、そっち(私の事らしい)は妖術か魔術でしょ」
もう一人の子。
「幽霊って霊力じゃないの、やだキモイ」
(キモくて結構、中庭の妖しさんに憑りつく様に言ってあげましょう)
お昼休み。
屋上に上がり私とヒカルでお弁当。
しかしヒカルはこそこそお弁当を隠して食べている、口に運ぶのはご飯ばかり、ふたを開いたときこっそり覗くと。
ご飯の中に梅干しだけ。。。(ほんとに貧乏なんだ)
ヒカルのお弁当にこっそり鶏のから揚げを放り込む、次は煮たお芋。
「蒼井ちゃん」
こっちを向いたヒカルの目は水が溢れそう。
「これからはヒカルは私のために働いてもらわないと、そんなご飯じゃ満足に動けない、今日だって私の身を守ってくれるんでしょ」
うんとうなずいて食べてくれた。
(何とかしないと朝夕だってろくなものしか食べてないかも、体壊しちゃう)
お弁当を片付けていると、私の二番目の手下与一君登場。
「私の与一来てくれたのね、嬉しい」
からかってみる。
「日輪さんのために来た、与一様、じゃなくて友部先輩と呼べ」
「オッケーよいちーーーー先輩」
「楽しそうですことお二人さん」
与一君は私とヒカルの間に割って入り同じ段に腰かける。
「いやいやいや楽しいことなど、お目に掛かれて光栄でございまする日輪殿、拙者そちの為なら、、、」
「止めなさい、与一を召還したのは私よ、私の言う事だけを聞きなさい」
「はっ、おれ召還されたの、ここ異世界?」
「ここは
「い、いや二番目三番目で結構ですから、日輪さんが二番て事で」
「だめよ、ヒカルは私のもの離さないわ、ねヒカル」
「はい蒼井さんに一生付いてまいります」
「ちょ、ちょっと濃過ぎ、お遊びなんだろ」
「じゃあ与一さんあなたの風使いの術は何のため、そんな事出来るのあなたしかいないわ」
「えっこんな事誰でも出来るだろ、幼稚園のちびっこだって使ってるぞ」
「どこで?」
「家の帰りの公園、毎日待ち伏せされてちょっとしたヒーローごっこだ、いい加減止めて欲しい早く小学校上がってくれ」
「何時からやってるの」
「えーと去年かな、結構長いぞ」
「ふふふ、結構いいお兄ちゃんじゃない兄弟?
しゃべっているのは私と与一君だけ、ヒカルは、、、太陽を手で遮ってる?
「全然知らんある日いきなり掛かってきなさいって風をぶつけられた」
「来なさいってプリキュア見てるのかな男の子でも」
「いや女の子だけど」
「えっそれヤバくない、知ら無い子でしょ」
「ああ、しょうがないだろ向こうから掛かって来るんだから」
「無視すれば」
「一度やった、大声出すし泣きそうになるし、こっちが泣きたくなった」
「気に入られちゃったんだ可愛い、会ってみたい与一の彼女に」
「おい誰にも言うな」
「当たり前でしょ私の与一よ、これで増々私のものね」
「おい脅迫か」
「まさかだーい好きな人にそんな事出来ない」
「おまえなあ、、、そっちの人何してるんだ」
ヒカルは相変わらず太陽に両手の平を向けていた。
「何してるの」
「充電」
「充電?」
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