第9話 中庭のオバケ

 中庭は下駄箱の出入り口の反対側にアルミ製のドアが有る、そこに注意書きが、

「上履きで出る時はコンクリートの場所だけ、入り口で汚れを落とすこと」


「上靴のままで良いみたい」

日輪さんの手を引いて中庭に出るが引っ張られる、出たくない様子。


 外に出てきた日輪さんを右腕で引き寄せる。

に寄り添う日輪さん。


「日輪さん、、、違うなあ、ヒカルちゃん、、、ダメ、ヒカル、よしこれだヒカル」

「は、はい蒼井様」

「うわっ、こそばゆい良いけど、二人の時だけな、普段は日輪さん」

「はい蒼井さん」

「あーだめ惚れちゃう、人の子を可愛いと思ったの初めてかな」

「だ、だめでございますわたくしも、、、人の子でございますか?」


 歩き出すとさらにくっ付いて来る。(エロい男の子の気持ちが分かる気がする、なんかくすぐったい)


「うん、子犬や子猫そのほか皆可愛い」(とりあえず妖しさんは省いておこ、今は)

「はいかわゆうございます」(美味しそうなのも中にはいますが)


「ヒカルは花の妖精って居ると思う?」

「あの花の周りを飛んでる小さな子供ですか、いないと思いますが」

「だよねだけどボクは(なぜかボクになってしまう)花の周りを飛んでいる蝶や蜂が妖精に見えてしまうんだ、中二病って言うより小二病だね」


 少しの間が開いて、

「素敵でございます、殿方の様な出で立ちいでたちでございますのにロマンチックでございます事」


(ロマンチックと言われてしまったから、実は妖し云々うんぬんと言えなくなった)

「小学校の時からそう思って見ていたから、つい妖精とか口に出してしまうかも知れないが気にしないでくれたまえ」(なにカッコ付けている)


 と思ったら前から奇妙なモノたちが近付いて来る。

(見せてはいけない)


「ヒカル怖い気持ちが消えるおまじないをしてあげよう」

「おまじない?」

 

 横に居るヒカルの方を向いて両手で頭を挟みおでこに唇を近付ける、

「モリエオカエり、

(なんなのこれ、催眠術?)自分でやっておきながら分かっていない。


 ヒカルの体から力が抜ける、両腕で受け止めお姫様だっこ。


正面から年上らしきここの制服を着た男女が少し離れて立ち止まり深々とこうべを垂れる。


 女性の方が、

「十六夜姫ようこそ我が庭園に」

「人の姿をしているが何者かな」

「妖しよ私達」


 全く人間と見分けが付かない。しかし制服がヒカルを同じデザインなのを私は見逃さなかった、昔の制服だ。


「あなたはまるで人の様だけど」

「とうの昔に死んでるの、幽霊の筈なのにそう見えませんか、十六夜姫でも」

「私はまだ見習い中、って言うかまだ何も分かってない、知ってることが有ったら教えて」

「教えられるほどの事は知らない、今日は挨拶に伺ったの、お花の水やりお願いね、花を枯らしたら祟るわよ、可愛い彼女に、ではまた」


 さすが幽霊、女子は池の中に消えていった、男子は走って退散?


(幽霊なんて存在できない筈なのに、どういう事紫?)

(妖しが近くに潜んで幻影を見せている、僕の姿が見えるのと同じこと)

(私に見えるのは分かるけど目撃情報が有るらしいのは何故)

(目撃されたのは男の方だ、女子に見えたのはここに中学生の女子の幽霊が出るという情報を仕込まれているからだ)

(良く分からないけど怪しいモノが居る事だけは確かね)

(魔物が目を覚ます)

(えっ魔物?何のこと)


「あっあら私、、、蒼井さん私、、、?」

(この子が魔物?どういう事)

 もう返事は無かった。


「ヒカルごめんねおまじないが効き過ぎた、放心状態になったみたい」

「えっ、、、」


 ヒカルはさっきの様子を思い出したのか真っ赤な顔になる。

「怖くないでしょ」

「はい、怖くありません、世界が変わりました」


 ヒカルも謎の言葉を吐いた。

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