第6話 私は何者

「目の前に居る十六夜の事じゃないよ」

「う、うんでも血は繋がっているでしょ」

「もちろん、正確な数も不正確な数も分からないけど子孫はおそらく何万人といる筈」

「えっそんなに居るの、じゃあ十六夜姫の後を継ぐのは、、、」


 紫は私の顔をじっと見て、

「ここに居る十六夜だけ」

「どうして私なの」

「僕より十六夜の方が分かっている筈だけど」


 少し考える振りをして、考えなくても分かっているけど、

「十六夜姫が決めたから」

「そうそして僕が十六夜を、もうその立場になったから姫と呼ばなきゃならないけどちょっとの間待ってくれ、僕が十六夜姫の一番目の家来」


「えっ家来けらい、か、彼でも良いのに」

 やっぱり恥ずかしいから視線を外して言ってみる。


「正味一心同体の彼でもいいのか」

「私が私を好きって事?」

「そうなる」

「でも人格は別じゃないの」

「いまはそうだがだんだん馴染んでもう一人の自分になるだろう」


「うーまあいいわ、今は紫が好きこんな感じで傍に居てくれるし、あまり気にしない事にする、ねえお布団に入ってよ」

「別にいいけど、家来だからね」


 さすが幻覚動く事なくすっと布団の中に入っていた。


「家来たって幻覚じゃ何もできないでしょ」

「防衛能力のアップ、別の生き物に僕を飛ばせる、そうするとそれの見ている情報が伝わってくる」

「でも、、、この部屋の中に生き物なんて私だけ、隣の部屋の人でも良いの」

「人に憑りつくのはなかなか難しい、憑りつかれた人は混乱するだろうし」


「えっ憑りつくの、それは私?紫?」

「どっちかな、だけど紫と思ってる方が使いやすいと思う、試してみれば」

「えっどうするの」

「天井裏にネズミが居るから自分が天井裏に移動したと思って」

「移動、天井に上がってると思えばいいのね、うん居る」

「そこに向かって僕を投げる、気持ちで」

「えー投げたつもり、えいっ」

 

「わっ、ネズミ」

 ネズミに驚いた訳じゃなく急に視界に現れたので驚いた、紫の手をにぎろうとしたが居なかった。


(すごいもう憑りついた、さすが十六夜)

(えっ憑りついたのネズミに)

(そうそのネズミが見ているものが見えている、見たい方に目を向けてみて)

(あっ自分が見てる様にどこでも、、、何か変な感じ)

(別のネズミに移動も出来るけど)

(同じように探せばいいの、、、)



 慣れない事をしたせいかそのまま眠ってしまった様だ、気が付けば朝、一人で眠っていた。


(紫!)

(ここに居るよ)

 頭の中で返事が聞こえた。


(ネズミは?夢だった、何処までが現実か分からない)

(ネズミを見た所まで、慣れないから疲れたんだ)

(良かった、紫が夢でなくて、あっ今日から学校だった?)


 家から持ってきたカレンダーはまだ箱の中、足元に置いていたリュックからパソコンを立ち上げ日にちを確認、今日はまだ休みだった。


 色々有ったので混乱している。

 

時間は五時、寝るか起きるか。

 私はこの時間に起きて朝走るのが日課、春休みは実家で身動きできない狭い場所で寝ていたから母を起こすと面倒なのでもっと遅い時間に走ってた、暇だし。


(よし、通常シフトに戻そう、でも外に出れるかな、あっ着替えもしてない、夕ご飯も食べてない大食らいの私が、お腹すいた)


 ジャージ(小学校の)を着ていたのでそのままトイレに駆け込み(トイレが近い人だから)歯磨きを済ませる、顔は(汚れてないからまあいいや)。


 部屋に歯ブラシを置いて寮長さんの部屋を覗くが誰も居ない、通り過ぎた食堂を覗くと調理場の方に明かりが点いていて二人のおばさんが朝食の用意をしていた。


食堂の中へ入り声を掛ける。

「おはようございます」

「あら早いのね、昨日の夜食食べなかったのね」

「夕方から寝ちゃってました、すいませんせっかく作ってもらったのに」

「仕方ないわ、その分朝食は沢山食べてもらうから、でも早くても六時普通は六時半からなの、もう少し寝ていたら」

「あの外走りたいんですけど」

「玄関は六時にならないと開けられない決まりなの前日に言ってもらって申請しておかないとね、今日の夜七時から寮の規則のお話があるから必ず出席してね、出れない人は明日もするけど」


 今話をしているのは寮母さん、昨日話を聞いてもらっているのである程度事情は分かってもらえてる。


 寮母さんは厨房の外に繋がる扉を指さして、

「ここから出てもいいけど学校の外には出られないわよ、八時過ぎたらインターホンでカギを開けてもらえるから」

「じゃあ運動場走ります、シャワーは何時から使えるんですか」

「シャワーね、、、決まりは夕方五時からなんだけど、今日は特別許可しましょ明日からは寮長さんと相談してみて」


 初めは軽く走ってみるが体が軽い、試しに走りながらジャンプ。。。


(えっヤバ)

自分の頭の高さを超えられそうな高さ、誰かが見てたら驚かれそう(セーブしなきゃ)


 試しに走るスピードも上げてみたがやっぱり本気で走ったらヤバいことになりそうである程度でセーブ、オリンピックに出られそうどころかギネスに認定されそうだ。

(普段は押さえなきゃ、まだあのお茶の効能が残っているのかな、紫の未練もまだ有るし)


 冴えない顔だが自分が目立つ事は自覚している、背が飛び抜けているし、かなりの色白血色悪いけど、十六夜姫の事が有るから私は目立つ訳にはいかないんだ。

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