第5話 体が動かない!
寒い!
あれから布団も敷かずに眠ってしまっていた。
手を着いて起き上がろうとするが手が動かない、顔も動かせず目さえ開かない。
(これって金縛り?)
ただ冷えすぎて体が硬直しているのかも。
(せめて目だけでも開かないかな)
眠気が覚めてくると体の上に重いものが乗っかっている気がしてきた。
なに?何かいる、もしかして紫!それなら良いけど(良いの?)
「紫」声を出そうとしたが口さえ開かなかった。
(紫居たら返事をして)
(十六夜ここに居るよ)
頭の中から声がした。
(ここってどこ?頭の中で声がするけど)
(そうだよ中に入っても良いって言ったでしょ)
(言ったけど、じゃあ今体に乗っかってるのは何?)
少し間が開いて、
(何もないけど、僕が中に入った重みを感じているのかも知れない)
(目も開かないんだけど)
(じゃあ試してみる)
(これでどう)
体に乗り掛かっていた重みがスーッと消えた、目を開くと私の横に背の高い男の子立っていた。
「紫!」
嬉しくてすぐ起き上がり縋りつく、
「会いたかったー」
そう言ったら腕の中の少年がシューと空気が抜ける様に小さくなっていく。
「えっどうしたの紫」
「どうもしないよ、幻覚が覚めただけ」
腕の中に目をやると五六歳の男の子になっていた。
「えっと、大きな紫はどうなったの」
「だから幻覚、実態じゃないけど今十六夜が見てる姿が今の僕」
「実態じゃない?、でもいつだって幻覚を見ている筈だけど」
「大きな紫は十六夜が作った幻覚、今の姿は僕が見せてる幻覚」
「何となく分かった」
ベッドに腰かけて、
「こっちにおいで」
「さっきの僕とは違うよ、さっきは実態が有ったから」
「分かってる、私に乗り換えたんでしょ、さすが鵺ね今まで憑りつこうとした妖しさえいなかったのに」
紫が膝に座ったけどやはり空気が乗ってるだけ。
「でも実態が無いのにどうして姿が見えてるの」
「同じことだよ実態が幻覚を見せているだけ、今の僕の実態は十六夜に替わっただけの事」
「体が動かなかったのは」
「意識だけ目が覚めて、体はまだ眠っていたから、僕が悪さをした訳ではないからね、僕の体は重いよ、想像してみて」
(紫は重い紫は重い)
そう考えると空気みたいだった紫が重くなって手で触れる事が出来た。
「あっ紫、これだよこれ、あー嬉しい朝までここに居て」
「それは十六夜しだい、僕はいつでも十六夜の中にいる」
「そう言う事か。じゃあ大きな紫も私が作ればいいって事ね」
「それはどうかな、でも危険だよ現実に戻れなくなってしまう事も有るから」
「、、、あっあり得る、さっきみたいにね、あっ寒いの忘れてた、寒いー」
「布団に入れば」
「そうする、傍に居て」
マタタビ茶の効果は切れているが紫が傍に居ると昨日の気持ちが蘇ってしまう。
私の気持ちがそうさせるのか今の紫は私より二つ三つ年下って感じ。
だから昨日みたいにステキー!まではテンションは上がらない、やれやれと思うがちょっと残念。
私が布団に潜り込むと紫はベットの端に腰かけた、私が手をしっかり握っているので逃げる訳にもいかない。
いや幻覚だから何とでもなるんだろうけどそのままで居てくれる。
「教えて欲しいんだ、十六夜の事私まだ何も知らない、お母さんに聞いてもそのうちに分かりますって何も教えてくれなくて」
「僕も知ってる訳じゃない聞いた話だけど、十六夜って言うのはずっと昔にこの場所でお姫様だった人、人じゃ無かったとも言われている」
「えっ、、、人じゃ無い?はあ???」
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