第4話 複雑な心

恋咲花乃と同じ中学だった。そう美那ちゃんから聞いて私は耳を疑った。今日1日見ていた限りでは、同じ中学だったと言う雰囲気は一切感じられなかったのだ。特に会話をするわけでも、あいさつを交わす訳でもない。積極的に話しかける美那ちゃんが、恋咲さんに近寄ろうとしないのが不思議だった。普通、同じ中学なら話しかけるはずだ。


「同じ中学…?なんで恋咲さんと話さないの?」


疑問に思って私が告げると美那ちゃんは顔を曇らせた。


「とりあえず、長くなるからスイーツ店に向かおう。そしたらゆっくり話すから。あと、私のことは美那でいいよ」


「わかった。…美那」


美那の言葉に私は頷いて承諾する。暫く歩を進めると軈て《やがて》可愛らしい内装の店に着いた。まだ店に入っていないのに、外まで充満している店内の甘い香りが鼻孔をくすぐった。外側から店一面に貼られた窓ガラスを一瞥すると、カラフルなスイーツがトッピングされたパンケーキや、上にふわりと乗せてあるソフトクリームに透明なソースがかかったパンケーキが視界に入った。どれも美味しそうなものばかりで、メニューを見る前に悩んでしまう。


「……美那、どれにするか決めた?」


店に入って暫くメニューを見て固まっている美那に、私は訪ねた。美那なら早く決めるだろうと思い、あまり待たせてはいけないとパソフトクリームとフルーツが乗っているパンケーキを選び、美那より先に決めたものの美那は思ったよりも優柔不断だった。先程から色々とメニューを指す美那だったが、『これも美味しそう』と、すぐ違うのを見てまた悩んでしまう。


「ま…迷う。どれも美味しそうなものばかりで」


「美那って…意外と悩むんだね。意外な一面が見れた気がするなぁ」


「そりゃ悩むよ。…逆によくそんな早く決められるね、雪音。見習いたい…」


そう言うと、暫し悩んだ美那はソフトクリームに透明なイチゴのソースがかかっているパンケーキを差した。早速注文し、10分くらい経った頃。


「お待たせいたしました」


パンケーキが運ばれてきた。私はすぐにナイフでパンケーキを切ると、一切れ口に運んだ。冷たいソフトクリームと甘酸っぱいフルーツが口に広がる。


「お、美味しい…!」


「良かったね…雪音」


「うん…!まさか本当にこれるなんて思ってなかったから…本当に嬉しい」


私が微笑むと、美那もつられるように表情を和らげた。だがそれは一瞬で、美那は気まずそうに視線を逸らすと、目を伏せた。グラスに入っているストレートティーの氷が溶ける音が私達の間に聞こえる。


「美那…どうしたの…?」


「あのね、恋咲さんのことなんだけど」


私が訊くと、美那は一呼吸置いてゆっくりと言葉を発した。何と無く真剣に聞いた方がいいと思い、私はフォークとナイフを置いて美那を見据えた。


「恋咲さんが…どうかしたの?」


「……同じ中学だってことは話したよね?私、中学の時ここに転校してきたの。ううん。正確には、。幼い頃ここに住んでたんだけどある出来事がきっかけで離れて、中学の時にまた戻ってきたんだ。学校に馴染めるか不安だった時、恋咲さんが話しかけてくれて…。私は恋咲さんと話すことが増えて仲も良くなったんだけどある事が起きて私達の仲がこじれたの」


「それは…?」


恐る恐る私は訪ねる。


「恋咲さんが想いをよせてる人と私は委員会が一緒になってさ…。委員会での付き合いだったんだけど恋咲さんはそれが許せなかったみたい。めんどくさいよね。よくある事だけど、本当に些細な事で仲がこじれちゃった」


美那は切なげに目を細めて薄く笑うと、言葉を続けた。


「…でも、良かった。私、本当は雪音が心配だったんだ。恋咲さんは普段気さくで優しいけど、恋愛が絡むとめんどくさいから。私が今日の朝見た限り、恋咲さんは湊人くんのこと…好きだと思うから。湊人くんの幼馴染である雪音にあたってないかとずっと思ってた」


「そっか…そうだったんだ__って、あれ?」


美那の言葉を最後まで聞いて呟いた後、私は違和感を覚えた。


「え?ちょっと待って…美那。なんで私が湊人と幼馴染だと言うことがわかるの?私、一回もそんなこと言ってない、よね…?」


私が訊くと明らかに顔色が変わる美那。その顔は言ってはいけない事を言ってしまったと思っているようにも見えた。


____________________

《作者から》

4話行きました!複雑な恋愛もいいけど複雑な友情も好きだな…笑

この小説は恋愛・友情を描いています。

読んでくれた方ありがとうございます!

これから意外な展開にして行きたいと思っているので何卒よろしくお願いします!笑

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