第2話 心

教室に着くと所々に空席はあるものの、殆どの人が揃っていた。早速クラスに馴染みグループを作っている人、そして1人で本を読んでいる人__いわゆる一匹狼の人が目にとまる。病院生活をしていて人との関わりがあまり無い、引っ込み思案な私はクラスで上手くやっていけるのか不安に思った。隣にいた湊人に助けを求めるように、私はちらりと湊人の方を見る。私の視線に気づいたのか、湊人はゆっくりと私に視線を移した。


「ん?どした?」


「いや…クラスでやって行けるかなって不安になって」


「不安になる必要ねえよ。お前ならすぐに馴染めるから、心配するな」


幼い頃からすぐに不安になってしまう私の事を知っている湊人は、優しく笑いながら告げた。何故かそんな湊人を見ていると本当に大丈夫だと言う気がする。お礼を言おうと私が口を開きかけた時、突然窓側の席から可愛らしい声が聞こえた。


「あれ?湊人くんじゃーん!久しぶりだねっ」


そう言うと茶色いロングの髪を揺らした女の子が近づいてくる。突然の出来事に思わず固まる私。


「お、恋咲 花乃。久しぶりだな!」


「うんうん!久しぶりっ。塾であった以来だね」


どうやら恋咲さんは中学の時、学校は違ったものの湊人と同じ塾に入っていたらしい。そしてたまたま第一志望校が同じで、ここで偶然再会を果たしたらしいのだ。私はずっと病院生活を送っていたからか、2人の関係については一切知らなかった。その場に居づらくなり、私は湊人に一言告げて先に席へとついた。遠目で仲良さげな2人を見てると弾んだ会話が聞こえてきた。


…やっぱり、私は湊人にふさわしく無いな。


誰とでも仲良く話せて人気がある湊人と、病弱な私が一緒にいるなんて何か違う気がした。湊人にはキラキラしていて明るい人__強いて言えば恋咲さんみたいな人の方がお似合いだ。嫌でも、そう感じてしまった。湊人は幼馴染だから私と一緒にいるだけなのでは無いかとさえ感じてしまう。

自嘲してバックから自分の好きな恋愛小説を取り出し、机に置いたその時。


「本、好きなの?私も好きなんだ」


柔らかな、だけどはっきりとした声が背後からかかった。振り向くと腰まである髪をポニーテールにしている女の子が座っていた。私と目が合うと軽く微笑み、立ち上がったかと思うと私の机の正面に来た。整った顔に白い肌。まじまじと見ているとその女の子は再び言葉を発した。


「それ、恋愛小説?」


「え?あ!うん。恋愛小説…好きなんだ」


「私も、恋愛小説よく読むよ。ハッピーエンドいいよね!…あ、名前まだ言ってなかったね。私は寺谷 美那(てらや みな)。席近いから、これからよろしくね」


明るく美那ちゃんは言った後、不意に何かを思い出したように真剣な表情をした。


「あ、さっき具合悪そうだったけど大丈夫?確か…華原 雪音ちゃんだったよね?その、何かあったら私に言って。力になれるかは分からないけど…」


「ありがとう。でも、今は大丈夫。少しだけ気になることはあるけど…」


湊人達の方を一瞥して再び机に視線を落す。まだ気になることは沢山あるけれど、今は楽しそうに話してる湊人達の邪魔をしてはいけないと思った。しばらく私の様子を黙って見ていた美那ちゃんが何かを察したのか小さく呟く。


「そっか…そう言うことか。湊人くんと恋咲さん…」


「…え?どうしたの美那ちゃん。何か今言った…?」


聞き取れなかった私は恐る恐る尋ねる。


「あ、ううん!こっちの話だから気にしないで。今日の放課後時間ある?駅前に新しくできたスイーツ食べに行かない?」


話題を変えるように美那ちゃんは言う。


「す、スイーツ店!?」


スイーツと聞いた私は思わず声が大きくなった。駅前にできたスイーツ店は、高校に入ったらいつか行きたいと思っていたお店だった。でも、どうせ行く人がいないだろうと私は諦めてしまっていたのだ。


「雪音ちゃんスイーツ好きなんだ?なんか元気なかったけど、元気でたみたいで良かった。じゃあ、今日帰りのHRが終わったら行こう」


美那ちゃんはそう言って立ち上がると自分の席に座った。同時に先生が教室に入ってきて、ガタガタと彼方此方で生徒が自分の席へと戻る音が教室に響いた。さっきまで騒がしかった教室はいつの間にか静まり返り、朝のHR開始の本鈴がただ鳴り響いた。



____________________

《作者から》

2話にいきました!今回長い!泣

なんか自分で描いたキャラなのに…それなのに…恋咲見てるとイライラしてくる( ゚д゚)←え?

恋咲のキャラ重要なんだけどね…


これから複雑な恋愛や友情が絡んでいく話にしていきたいなと思っています笑

見てくれた方ありがとうございます。次話も見てもらえたら嬉しいです!笑

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