溢れ出す想い~縮まる距離~
紗凪
第1話 高校での再会
春の心地よい暖かな風が部屋の窓から流れこみ頬を撫でる。私、華原雪音は真新しい制服に腕を通すと肩まである栗色の髪をとかし、玄関へと急いだ。玄関のドアを開けるとほのかな桜の匂いが鼻孔をくすぐった。不意に風が吹き、地面に落ちていた桜の花がふわりと宙に舞う。これから始まる新しい学校生活。病室の窓から景色を見るのではなく、今この場所で、自分で歩きながら景色を見れることが本当に嬉しかった。胸を躍らせて高校への通学路を歩いていると、前に背の高い男子が見えた。
「
小さい頃から見慣れている後ろ姿。顔は見えなかったものの、すぐに湊人だということがわかった。
「っ、雪音?お前体調大丈夫なのか?」
「うん…今は症状落ち着いてるんだ。久しぶり。…中学二年生の時からあってないよね。症状があの時本当に重くて、会えなかったから、今会えて本当嬉しい」
心の底から暖かい感情が溢れ出して、私は思わず微笑んだ。
「ん。そっか。なら良かったな」
私につられるように、表情を和らげる湊人。相変わらずかっこよくて私は火照った頬を隠すように視線を逸らした。顔が整っているどころか、湊人は誰にでも平等に接していて、性格も良い。病弱な私に比べて本当に頼りになる。
「同じクラスだと良いな。私、中学のとき湊人に会えなかったから、その分の時間を埋めたいんだ」
「一緒に帰れるからいいだろ?近所なんだし。…幼馴染だから時間なんてすぐ埋まると思うぞ?」
「そう、だよね…埋まるよね」
幼馴染。その湊人の言葉が胸に突き刺さった。湊人が私のこと幼馴染だとしか思っていないのが伝わってきたような気がした。
「あっ、ねえ!一緒に下駄箱に貼り付けられてるクラス表早く見よう!」
落ち込んでいることがバレたくなくて、私はなるべく平常心を装い無理やり話題を変える。不自然に思われないか心配しながら。
だけどそんな私の心配を消し去るように湊人は普段の調子で言葉を発した。
「お、そうだな!ほら、行くぞ雪音」
不意に私の手首を掴み駆け出す湊人。足をもつれさせながらも私は転ばないように用心し、必死に足を動かした。私たちと同じように学校へ向かう生徒を避けながら校門を抜けると、湊人は下駄箱に貼ってある紙の前に来て立ち止まった。
「ちょっ、早いよ湊人…」
肩で息を整え、私は呟く。
「あ、悪い。…でもほら、これ見てみろよ」
湊人が指した指の方向を見ると、1年A組のクラス表に私と湊人の名前があった。感情を抑えきれず、私は思わず一際声を大きくして勢いよく湊人に振り返った。
「み、湊人!同じだよクラス!見間違えじゃないよね!?」
「見間違えかもな〜?」
「…え?」
そっぽを向いて言う湊人。私は目をこすり再びクラス表を凝視する。…が。
「同じじゃん!!」
何度見てもクラス表には私と湊人の名前が載っている。
「あー、悪い。ちょっとからかって見た。お前、相変わらず騙されやすいのな」
くくっ、と喉を鳴らして笑いをこらえる湊人。湊人は幼い頃から人をからかうのが好きだ。騙される度に、何度も私は騙されないと決意するが、中々そうはいかない。
「…もう!でもなんか、このやり取り久しぶりすぎて怒る気失せちゃった。そろそろ予鈴なるし、教室に移動しよう?」
からかわれている筈なのに何故かこのやり取りに幸せを感じた。
…そっか。私はこんな風にずっと湊人と会話がしたかったんだ。他愛のない会話を。
「おう。じゃ、そろそろ教室行くか。迷子になるなよ?」
「ならないよ…!」
笑顔で私は言い返すと、湊人を抜かして先に廊下を歩き始めた。湊人も追いつき、2人で肩を並べて教室に向かう。さっきまで静かだった廊下は、数多い生徒の声で賑わっていた。
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《作者から》
初の学園恋愛小説書いてしまったぁぁ!書けないのに…書き慣れていないのに。勢いで書きました。
見てくれたかた、ありがとうございます!
よろしければ次話も見てもらえたら嬉しいです。
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