妃乃里と買い物35 ― ブラジャーアイマスクハリネズミ男とおっぱいチラーと紙パンツ仮面
「あら賢吾君」
「あ、ひのりさ―――」
賢吾が言い終わる前に、俺は全力疾走をもってして賢吾の真後ろに近づいた。
妃乃里はそれに気づいて驚いた顔をするが、俺はそんなことは気にせずに、さっきシャツを着たときに脱いでおいたブラジャーを持ち、背後から賢吾の目を覆うようにしてそれをかけた。
「…………ん?」
反応の鈍い男で助かるぜ。
今の賢吾の状態を簡単に言い表すならば、ブラジャーアイマスクハリネズミ男の誕生―――といったところか。
おそらくここから自分の目に覆いかぶさったブラジャーを手にとるまでさらに時間はかかるだろう。のろまだから。
なんで急に暗くなったんだ? 停電か? そんな思考をもっていては賢吾ではない。賢吾が今思っていることとすれば、どうして俺は急に眠ってしまったのだろうか―――そんなあたりだろう。当たらず遠からずに違いない。
こいつが周りの視線をひきつけている間に、女性用パンツを穿いたままの、そしてそれをシャツ一枚でぎりぎり隠している状態である俺は、とっとと退散を決め込むことにする。
妃乃里を担ぎあげ、当初の目的であるストラップベルト&アンダーベルトなしのGカップブラジャーを、下着売り場から目星をつけていたものをさっと手にとると、未だ妃乃里と言葉を交わしてたときの姿のままブラジャーで目を覆って立ち尽くす旧知を尻目に、その場を後にした。
はぁ……はぁ…………はぁ……。
久々の全力ダッシュで息切れが止まらない。
「ねぇ…………あの、さっきの男の子って賢吾君よね。奏ちゃんと仲の良い……大丈夫なの? すごく視線を集めていたけど」
全ての元凶のお前に大丈夫だのと言われたくないんだが?!
そして賢吾を心配しているようでしていない、いささか不機嫌そうなその顔はなんだ。お楽しみを邪魔したことに不機嫌なのか、賢吾の方が視線を集めていたことに怒っているのか……。
さらには俺が紙パンツを被っていることには何も触れないのな。妃乃里的にはそれどころではないということか。
まったく……こんな時でも谷間を惜しげもなく見せつけているわ。このおっぱいチラーが。
それは妃乃里が率先して谷間を見せているのではなく、服装がそのようにさせているわけだが、そうである所以は妃乃里がその服を着てきたからであるため、そう考えると率先して谷間を見せていると考えられるわけだが……。
このまま露出狂として近所で名を馳せないか心配だ。
「大丈夫だろう……たぶん」
あの場を見ていた人は賢吾が被害者だという認識はあるはずだ。
そして俺はさすらいの紙パンツ仮面としてデパートで語り継がれることになるだろう。
「早く帰ろう」
「そうね。もうすぐ夕飯だし、帰りましょう」
俺は近くのトイレで着替えを済ませた。
そのまま地下1階に下りて、預かっててもらったプレゼント?を受け取り、デパートを出る。
さっきは少し機嫌が悪そうだった妃乃里だが、今日は随分楽しかったのかごきげんな様子で胸を余計に弾ませながら帰路に就いた。
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