妃乃里と買い物28 ― 気持ちイイところをずっと揉んでいるのは人間の本能でしょ。いや絶対そうだから!
「その……どうでしょうか」
………………。
今俺の視界の中には、この人の上裸と残りのパンツスーツ姿の下半身しか主だったものはないけども……。それとも首輪を掛けられ鎖につながれて、まるで飼われているような状況は楽しめているかい?ということだろうか。首輪の付け心地を聞かれているのだろうか。
全っ然わかんねぇ!!!
一体…………一体どうしたと言うんだ麗美店員ーーーーーー!!!
「僕のお尻の揉み心地はいかがでしょうか?」
は?
へ?
おしり?
オシリ?
oshiri?
お尻って言ったよね? 今。
どういうことだ?
感想を求められているということは、俺が触ったことがあるということじゃないか。
そんなわけ――――――。
これほど右手を今すぐ切り落としたいと思ったことは今までなかった。
俺の右手は、横にいる麗美店員のお尻にあった。
そして今もなお、揉んでいたのだった。
ファァァァアアアアアアアアアッッッツ???!!!
なんだこの状況は!
なんで右手がそこにあるんだよ!
超気持ちよくて無意識にずっと触っていたってことかよ?!
わけがわからんぞ!!!
いやさっきまで触ってたのは俺だけども。完全にその光景を自分で目撃してしまったけども。現行犯だけども。だから訳は分かっていなくちゃいけないんだけども!
とりあえず今はやることは一つしかない。
あれだけ表情を変えなかったあの麗美店員がこんなにも顔を赤らめている姿はもしかしたら二度と見ることはないかも知れないと思えるくらいに貴重だ。
いや貴重とか言ってる場合じゃない。そんな貴重とも言える状態にしてしまったこの俺は、先ほどの麗美店員の質問に最高の返答で答えることでなんとかカバーしたいと思う。
「最高でした」
お尻を揉んだことに対しての感想として、今のはよかったのだろうか。単純に謝っておくべきだったか? すぐ謝る日本人の端くれとしてそれが無難だったかもしれない。
しかしどうだ。自分の体の一部が最高だったと言われるのは、なかなかに気分がいいものじゃないか? いい気分になってほしい! お願い!!!
「…………ならよかったです」
どうやら怒ってはいないようだ。
なんとか俺の行儀の悪い右手が引き起こしたお尻モミモミ事件は無事幕引きとなったようだ。
―――でだ。
俺はもうこれ以上ここにいる状況を長引かせるわけにはいけない。
警察に連絡するみたいなことをあの小川作りがうまい警備員が言っていたし、何よりあの妃乃里の口からこぼれた笑みが気になってしょうがない。このまま終わるとは思えない。
このまま終えるには、今すぐここから出てさっさとこのデパートを後にすることだ。
実は俺にはこの一件を一瞬で解決できる一撃必殺のアイディアがある。
もったいぶるつもりはないし、前にポロッと言っちゃっているから新鮮味にかけるかもしれないが、なんと言っても禁断の手法のため、なかなかに実行するどころか口にするのもためらわれる。
俺からこれを提案するのはとても勇気がいることで、次の一言は人生をかけることになるといってもなんら決して過言ではない。むしろ適言と言えるだろう。
躊躇している暇はない。
俺はドキドキしている心臓をさらに締め付けながら、緊張で喉を細くしながら声がでるぎりぎりの状態で言った。
「麗美さん。パ…パパパおパンツ、着比べてみませんか?」
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