第5話 藁しべ長者
前沢課長は声を張る。
「大手自動車メーカー、トニョタ、専務カードを配置。トニョタの前年度の売り上げは29,000,000円。」
「こざかしい……」
「コネカードにより、大学時代の先輩のコネで知り合った専務を召喚! その専務のツテで紹介してもらった会社役員名刺を配置」
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前沢課長 残りライフポイント 2,700,000
三つ子物産 専務 前年度 売り上げ 4,800,000円
トニョタ 専務 前年度、売り上げ 29,000,000円
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残りライフポイントは2,700,000……今の手札を考えると、次の一撃を、防げるか、どうか……。
常務はライフポイントはまだ9,100,000も有る。
ターンごとに攻撃しても俺に勝機は無い。
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幕ノ内常務 残りライフポイント 9,100,000
ユニゾン 専務 前年度 売り上げ 2,800,000円
エイト&L 重役 前年度 売り上げ 6,000,000円
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フィールドに配置され、生気の無い目で睨みあう、スーツを着た中年オヤジの幻。
心なしか、立ちこめる加齢臭が、オーラのように見える。
「大手通販サイト、ユニゾンの専務カードへ、攻撃!」
攻撃:課長→常務
三つ子物産 - ユニゾン = ストレスダメージ
4,800,000 - 2,800,000 = 2,000,000
大手通販サイト。ユニゾンの専務は、フィールドの中央で盛大に爆死した。
常務のライフポイント - ストレスダメージ =常務、残りライフポイント
9,100,000 - 2,000,000 = 7,100,000
しかし、常務は一瞬、立ちくらみのような、よろめきを見せると、地に足を着け、大きく肩を張る。
その凛々しい立ち姿は、まるで、襲いかかるストレスを、はね除けたように見えた。
「この程度のストレス……気にしていたら、常務は務まらん!」
幕ノ内常務は扇のように開いた名刺から、1枚選び、投げる。
ターン、幕ノ内常務。
「大手電子機器メーカー。ソノー 社長 前年度、売り上げ 8,000,000円」
「社長名刺だと!?」
前沢課長は、クマが出来た目を、大きく見開き、おののいた。
「社長名刺。ここでトップクラスの手札を引くとは」
幕ノ内常務は、せせら笑い言う。
「おいおい、これくらいで驚かれては困るよ……」
常務はもう一枚、名刺を選び、再びフィールドに投げ放つ。
「コネなら、君より私のほうが多いのだよ。だから今の地位に付いたんだ! コネカード!」
サポートにより、更に名刺を引く。
「大手自動車メーカー、ホンバ、社長! 前年度の売り上げは15,000,000円!」
肩書きを聞いた、前沢課長の血の気が引き、動悸が激しくなる。
「な、何ぃ!? 日本、最大手の自動車メーカー社長と、知り合いだと!?」
ダメだ、息切れがする。
煙草を止めたと言うのに、呼吸が苦しい。
しっかりしろ! 名刺の攻撃以外でストレスダメージを受ける訳にはいかない。
だが、時すでに遅し。課長のライフポイントはストレスにより削られる。
前沢課長
動悸、息切れにより、1,000のストレスダメージを受けた。
課長のライフポイント - ストレスダメージ = 課長、残りライフポイント
2,700,000 - 1,000 = 2,699,000
し、しまった!? 自分で自分の首を絞めるとは……日頃から健康には気を付けていたというのに……。
幕ノ内常務の手札が、フィールドに揃う。
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幕ノ内常務 残りライフポイント 7,100,000
エイト&L 重役 前年度 売り上げ 6,000,000円
ソノー 社長 前年度、売り上げ 8,000,000円
ホンバ 社長 前年度、売り上げ 15,000,000円
四田銀行 サポート名刺
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負けじと、幕ノ内常務の名刺も、続々とスーツを着た、中高年が召喚される。
幕ノ内常務は、自身の名刺を顔に寄せ、じっくり手札を眺める。
扇のように開く名刺で、口元を隠し、不適な笑みを見せた。
「ふふふ……これで、終わりだと思ったら、心臓は保たんぞ? サポートカード。リーマンショックカードをフィールドに配置」
人差し指と中指で、名刺を掴み、投げる――――――――。
「リ、リーマンショックだっと!?」
リーマンショックが、心臓に与えるショックは、計り知れない。
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