第1章:決意

「選ばせてやる」

そう問われた俺は、少し困惑しながらも、

「生きたいです」

そう答えた。

それから1週間が経った。

「いったい、いつになったらここから出られるんだ」

そう、自問自答する日々。

「クソっ、結局殺されるんじゃねえのかよ!」

と叫んだその時、

「ん?死にたかったのか?」

ドスの効いた声で問いかけられる。

「え?いや……あの……」

「それより、謁見が決まったぞ、流石に王とは無理だが」

「謁見……とは?」

「大臣と少し話す、お前の処遇はそれで決まる、発言には注意しとけよ」

「は、はぁ」

「よし、時間は限られている、行くぞ」

ガチャッと牢の鍵を開け、俺は連れ出された。もちろん手枷は付けている。

「大臣殿、お連れいたした」

すると、しわがれた声で

「うむ、下がれ」

「抑えてないでよいのですか?」

「構わん」

すると、俺を突き出し、さっさと退室した。それから、しばらく沈黙が続いた。

先に話したのは、大臣だった。

「お主、名は?」

名前、俺の……名前。

「あの……」

「名は?」

「名前は……ありません」

この街では、名前が無い子供などザラにいる。偉業を成した時に、王に付けられるのが通例だ。

「そうか、ならば」

と言い、少し考え

「お主はこれから、ユミルと名乗れ」

「ユミル……でしょうか」

「あぁそうじゃ」

冗談じゃねぇ、なんで自分で付けるならまだしも、大臣に付けられるんだよ。

「なんじゃ?不服か?」

「い、いえ」

「なら良い」

よくねぇけどな!

「さて、真面目な話をするかのぅ、ユミルよ」

急に雰囲気が変わる。

「お主は魔物を全て殲滅することに協力する、と言ったから今こうして生きておるのじゃ」

「はい、ですが具体的に何をすれば?」

「まぁまぁ、話を急ぐでない」

「はぁ」

「お主、戦闘経験はあるのか?」

「あ……ありません」

「ほう、それは興味深いのぅ」

少し疑いの目を向けられた感がある。

「では、そのまま魔物の中に放り込めばお主は死ぬ、それで良いか?」

「よくないです!」

「正直でよろしい、お主にはしばし、訓練を受けてもらおう、もちろん一通りの戦闘技術を覚えてもらう」

「はい!」

「良い返事じゃな」

すると、

「大臣殿!」

と言いながら、勢いよくドアを開けて叫んだ。

「大量の魔物が現れました!急いで迎撃体制を整えなければ!」

「良いタイミングじゃ!ほれユミルよ、魔物と戦い我らへの忠誠を誓うのじゃ」

無理言うなこのじいさん。

「ユミルとは?」

ドスの効いた声で問う、そりゃそうだ、俺の名前はさっき決まったんだから。

「こやつじゃ」

「なるほど、行くぞユミル!我に続け!」

「は、はい!」

俺はこの世界を、この国を守る、そう決意するのは、まだ先の話だ。

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