気づいて欲しい
池野向日葵
第1話
つい先日、眼鏡からコンタクトレンズに付け替えた。私の視力は、案外悪い方ではあるのだが、普段は文字とか見えていなくてもいいかな、いや、むしろ見えていない方がいいかな、と考えていたので、眼鏡を付けたり外したりしていたのだが、最近、そのせいで眼鏡の度が合わなくなってきていることに気がついた。なので、急遽、ずっと付けていられて、付けていることに抵抗を感じないであろう、というイメージのあったコンタクトレンズを買いに行った。そして、その日は、修了式で授業がなかったので、コンタクトレンズを付けて学校に行ったのに、気づかれることはなく、一部の仲の良い友達には昼食をとっている時に、「今日、コンタクトレンズなんだ。」という話を、ごくさり気なく持ち出し、少し自分を落ち着かせる。その後の校舎の清掃の時間が終わり、私は自分の清掃分担区から教室へと戻ってきて、教室の分担だった班の手伝いを少しだけし、ホッと一息ついて廊下の壁におっ掛かり、ぼーっと教室の中を眺める。すると、彼が教室に戻ってきて、男友達と何かを話している。少し笑顔になる彼をぼーっと眺めていると、彼が顔を上げ、こちらの視線に気づいたのか、物凄くまじまじとこちらを見ている。私は、見ていたのは自分ではないぞ。と言うふうな素振りで、あたりを見回し、自分が勝手に考えている彼の眼中の相手を探す。しかし、その子はいない。私は、いない事に戸惑いを感じ、どうしたらいいのかと、ますます焦って、誰か友達の方へと逃げてしまいたい。と、キョロキョロ。きっと、はたから見たら私は、変わった人とか、おかしな子とか、面白い動きをする子とか、思われているんだろうなって、もし、彼もそう思っているのなら、私は恥ずかしさで彼の視界から消えてしまいたいとさえ、時々思う。
気づいて欲しい 池野向日葵 @baron2260
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