第22話
「こんな所いられないわ」
麻理はスーツケースを持ってマンションの玄関を出た。
突然のカマキリの群れの襲来に周りは騒然としていた。
人混みをかき分けて車道に出た時、道が暗くなった。
麻理は「あれっ」と上を見上げると巨大なカマキリが降りてきた。
「いやあああ!」
麻理は叫んで車道を走った。
目の前に軍用車が走って来た。
「助けて!」
麻理は大声で叫んだ。
車が止まって中から迷彩服を着た男達が出て来た。
「助けて」
麻理は必死に走ったが、何かが足に引っ掛かって転んだ。
「痛い、何?」
足元を見るとカマキリの鎌が絡んでいた。
「いやあああ!」
麻理の悲鳴とほぼ同時に隊員達が一斉に発砲した。
「くそ、効かないのか」
隊員達の中に宮川がいた。
再び一斉に撃ったが効かなかった。
「殺されるの私…」
麻理はゆっくり近づくカマキリの顔に怯えて呟いた。
両腕の鎌がゆっくり麻理の首筋に届いた。
「このまま首を切られて死ぬの私…いや、いやああ!」
麻理は叫んだ。カマキリはゆっくり腕の鎌を麻理の首に切りつけた。
「うっ!」
カマキリの前で麻理は唸り声をあげて倒れた。
「何だ。様子がおかしいぞ」
宮川は銃を構えながら様子を見た。
カマキリは羽根を広げて学校の方向に飛んだ。
宮川は麻理の所に駆け寄った。
「おい、大丈夫か!」
宮川は麻理の体を揺さぶった。
「彼女を病院へ」
隣に立っていた男に宮川が指示を出した。
一瞬、宮川の目の前を風が吹いた。
「えっ?」
宮川が男を見ると顔面に長い刃物の様な物が刺さっていた。男は血をボタボタと流してガクッと倒れた。
宮川は麻理を見た。麻理が手を伸ばしていた。それは手ではなく長い刃物だった。
刃が二つに折れて鎌状になった。。
「こ、これは…」
宮川は麻理からとっさに離れた。
「全員退避!」
宮川は叫んで車に乗り込んだ。麻理が車の屋根に飛び乗り、長い腕の刃を突き刺した。天井から突き抜ける刃を宮川はギリギリかわした。
宮川は車をバックした。
屋根からフロントガラス越しに覗き込んだ麻理と目が合った。麻理が長い腕の刃を車のフロントガラスにぶつけた。ガラスが砕けて宮川の肩を刃がかすめた。
「くそっ!」
助手席の男が拳銃を発砲した。
麻理の目が男に向けられた。腕の刃が男の顔に刺さった。
「おい!」
宮川は叫んだ。男はぐったりとなった。
麻理が再び宮川に刃を向けた。長い刃が宮川の左肩に刺さった。
「うわあああ!」
肩の骨に達する激痛に宮川は叫んだ。
「この化け物が!」
宮川は刺さった刃を右手で抜き、アクセルを踏み切って急ブレーキした。
車が止まった反動で麻理は前方に吹っ飛んで倒れた。
「とりあえず逃げるか」
宮川は痛みをこらえてハンドルを切って学校に戻った。
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