第16話
「おい何だよ。緊急封鎖って…あれ?」
大野は携帯電話で澤野に怒鳴ったが通話が切れた。
「圏外ってどういう事だ」
大野は携帯電話を何度も操作したが、画面の通信状況は圏外のままだった。
「しょうがない、戻るか」
大野は覆面パトカーに乗り込んで無線機のスイッチを入れた。無線機からはノイズの音しか出なかった。
「こちら五号車。聞こえるか?」
大野の問いかけに応答なかった。
「どういう事だ」
大野は車のエンジンをかけて走り出した。
「いたたた…」
病室で治也は目覚めた。吊るされた点滴が見えた。
「ここは…病院か」
治也は小さく呟いた。麻酔のせいで体が十分に動かず眼球だけで辺りを見回した。
蛍光灯のついた病室には誰もいなかった。
(俺はどうしたんだろう。化け物と戦って…あっ…俺生きているんだ)
治也は順番に思い出した。
(腕だけ動くかな)
左腕に感覚を集中した時、脇腹に痛みが走った。
治也は「うっ…」と唸った。
「くそっ、あの化け物が」
唸り声の中で大野は呟いた。
病室の外は騒然としていた。
「この時間の病院は騒々しいのか」
足音や器具を運ぶ音が騒々しく響いていた。
「一体どうなっているんだ」
警察署に戻った大野は席に座っていた澤野に訊いた。
「県警から待機命令が出たんだ」
「しかし無線も携帯電話も使えないってどういう事だ」
「電話会社のトラブルだと連絡が来ていたようだが多分違うな」
「外と通信が出来ないようにって事か…」
二人が話していると井沢が戻って来た。
「町の外に通じる道路は封鎖されていますね。あと沖に巡洋艦が来ています」
井沢は上着を脱ぎながら言った。
「自衛隊が来ているのか。お上も承知しているのか」
「極秘に化け物退治をやりたいのじゃないんですか」
「ああ、そういう事…」
三人で話していると課長の上田が入って来た。
「課長、どうするんです?」
「とりあえず自衛隊に任せて待機だそうだ」
「あの化け物は何ですか?」
「説明はなかった。上からのお達しなんてそんなもんだろう」
上田の答えに大野はため息をついて、
「ここにいてもつまらないし、屋上から様子を見るか」
と上着を着て部屋を出た。
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