第14話

 警官達が次々と黒い鎌の犠牲になった。ある者は腹を貫かれ、腕をスッパリと切断された。

 男の黄緑色の目が大野に向いた。男が羽根を広げて飛びかかって来た。

 「くそっ、どうするか」

 大野は拳銃を構えて発砲した。

 一発目が左手の鎌にふり払われた時、もう一発撃った。

 銃弾が男の首に当たった。男はひるんで後ずさりした。

 大野は更に発砲したが両手の鎌に遮られた。

 「くそっ、化け物が!」

 銃弾に応戦する男に大野は叫んだ。

 首から淡い黄緑色の血を流した男は裂けた口で微笑むと大野に背を向けて飛び去った。

 「一体何なんだ。あいつは」

 大野は戸惑いながら背広から携帯電話を取り出した。

 「ものすごく慌ただしいわ」

 「ああ、かなり怪我人が出たようだな」

 病院の激しい人の行き来に望海の隣を歩いていた両親が呟いた。

 望海は黙ったまま正面を見ていた。

 救急車のサイレンが外で鳴り響いた。

 「どうして正面玄関からなんです」

 「仕方ないわ。救急口は塞がっているから」

 横を走り過ぎる看護婦達の慌ただしく話していた。

 「いやだわ。このまま帰っても大丈夫なの」

 「ここにいるより落ち着くだろう。さあ急いで」

 三人は正面玄関を出た。

 望海の目から涙が流れた。

 「どうして、こんな事になっているの」

 望海の呟きは周囲の声にかき消された。

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