第13話

 男は右手を後ろに振り回した。

 「うわあああ!」

 治也の脇腹に激痛が走った。治也は手の鎌が脇腹に刺さったのだと感じた。

 痛みが脇腹から腹にかけて走り、心臓がきりきりと締め付けられた。

 治也の息が荒くなった。

 「おい化け物、お前は何なんだ」

 治也の問いかけに男は振り向いた。

 男の口が両側に裂けて、黄緑色の目を細めた。

 「笑ってんのかよ。化け物のくせに」

 治也は意識が時々霞みながら呟いた。治也の視界に警官達が走って来る姿が入った。

 「おい、こいつを撃て」

 治也は叫んだ。警官達は状況の異常さに戸惑った。

 「ビビってんじゃねえよ。早く撃てよ!ポリ公が!」

 治也は叫んだ。警官達が一斉に構えた。

 警官の一人が「撃て」と号令を出すと一斉に発砲し始めた。

 ピストルの銃声が何発も響いた。治也は目を閉じた。

 「うわあああ!」

 治也の脇腹にまた痛みが走った。男が治也の体を刺したまま腕を勢いよく振り上げた。

 治也は投げ飛ばされて道の脇のブロック壁にぶつかって落ちた。

 治也は小さく唸って気を失った。

 警官からの連絡を受けて大野が現場に駆け付けた時には発砲が始まっていた。

 「何だあれは…」

 大野は男の異様な姿に驚いた。

 男は両手が長い鎌状で目が黄緑色に腫れ上がって口が両側に裂けていた。

 いくら銃弾を受けても男はひるむ事なく黙って立っていた。

 銃声が止んだ。男は羽根を広げて警官達に飛びかかった。

 長い鎌が一人の警官の頭を貫いた。足でその警官の顔を蹴って鎌を抜くと別の警官の首をはねた。

 「化け物だ…」

 数秒の間に警官達を殺していく様に大野は思わず呟いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る