第10話

 「あれ何?」

 女子生徒が指を差した。望海がその方向を見ると大きな白い何かが校舎に向かって飛んできた。近づいてくるそれは巨大なカマキリの形をしていた。

 「やばいわ。みんな、窓を閉めて」

 望海の指示に他の生徒達が悲鳴を上げながら窓を閉めた。

 その生物は隣の教室の窓に体当たりした。

 窓ガラスが割れて外にも飛び散った。

 隣の教室から悲鳴が聞こえてバタバタと廊下を走る足音が響いた。

 望海達も逃げようと教室のドアを開けた時、

 「ぎゃああああ」

 異様な悲鳴が廊下から響いた。

 望海は悲鳴に立ち止まった。

 開いたドアから廊下に倒れた誰かの手が見えた。その後白くて長い鎌のような物が天井に近い高さから現れた。

 「な、何なの…」

 望海は立ちつくした。

 頭と思われる物が見えた。

 それは白い三角形のカマキリの頭だった。そのカマキリと望海は目が合った。

 「きゃああああ!」

 望海は悲鳴を上げて反対側のドアに走り出した。

 教室にはまだ生徒が沢山残っていた。カマキリは入口をくぐって教室に入って来た。教室の中は騒然とした。

 一人の男子生徒がカマキリに椅子を投げた。

 カマキリは鎌状の手で椅子を跳ね飛ばした。他の生徒も椅子を投げながらドアから逃げた。

 望海はまだ教室にいた。振り向くと白いカマキリがゆっくり近づいて来た。

 「この野郎!」

 男子生徒が椅子を投げるとカマキリは椅子を跳ね返した。

 「ギャッ」

 望海の後ろの女子生徒に椅子が当たって短い悲鳴を上げて倒れた。

 カマキリがゆっくりと近づいて来た。

 「望海、早く!」

 教室の外から香奈の声が聞こえた。

 カマキリが前のめりの姿勢で鎌を振り上げた。

 「いやああ!」

 望海は悲鳴を上げながら教室を出た。

 「うわああああ!」

 教室の中で男子生徒が叫んだ。

 望海達は廊下を走り階段を降りた。

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