第4話

 夜の公園で遠慮がちな喘ぎ声が微かに聞こえた。

 女が男と茂みで交わっていた。

 「もう、こんな所でやるのは嫌だわ」

 「誰かに見られると思いながらやると燃えるだろう?」

 若い男はにやけて言った。

 「AVの見すぎよ。最低」

 女は服を着て歩いて行った。

 「おい待てよ!」

 トランクス一枚の男は女に声を掛けたが無視されて戻ってこなかった。

 「ちっ何だよ。せっかく楽しもうと思ったのに」


 男はズホンを履きながら呟いた時、大きな影が覆った。

 男は振り向いてそれを見た時、

 「うわああああ」

 悲鳴を上げてすぐ後に表情が固まったまま動かなくなった。


 「全く何なのよ!」

 女は公衆便所の手洗い場で腕をまくって肘から下を洗っていた。

 「ああ、もう泥が取れないじゃない」

 女が苛立ちながら叫んだ。

 外でドサッと音がした。

 「ちょっと、汚れが取れないわ。もう絶対やらないから」

 男が外にいると思った女は大声で言った。返事はなかった。

 「えっ違うの?」

 女は公衆便所から出た。

 外には誰もいなかった。

 「何の音だったのかしら…」

 女は辺りを見回した。誰もいなかった。

 

 ズズズ…

 

 何かを引きずる音がした。

 女は公衆便所の方に振り向いた。

 公衆便所の屋根から身を乗り出して何かが女の顔のそばにいた。


 「いやあああああ!」


 女は悲鳴を上げた。そして表情が固まった。


 女の背中から鎌のようなものが刺さって胸を突き抜けた。


 女の目は大きく開いて眼球が止まっていた。

 突き出た鎌状のそれには血がこびりついていた。

 もう一つ鎌状の何かが女の体を背中から刺さり、胸に突き出した。

 女の体がビクンと一度動いて力が抜けたように上半身がのけぞった。

 女の顔は大きく開いた目と半開きの唇で固まっていた。

 それはただの肉塊になった。

 肉塊を抱きかかえるように鎌を持ち上げてそれは屋根の上から羽ばたき、夜空に飛んでいった。

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