一面
「ただいまー」
「あら、お帰りなさい」
「げ、姉さん……」
玄関で靴を脱いでいた姉の瑠美子と出くわし、静流は嫌そうな顔をする。
瑠美子はそんな妹を鼻で笑った。
「今日も例の先輩とお話ししてきたのかしら?」
「なにそれ、ただの部活だし」
「先輩と話すことしかすることがないと言ってたのはあなたじゃない。それが活動内容でなくって? まあ、その表情から察するに、大した活動は出来なかったみたいね」
「ぐ……」
瑠美子の言葉を受け、静流は狭い玄関で逃げるように視線を泳がせる。
くすり、と瑠美子は静流を笑い、ひらひらと手を振りながら踵を返す。
「手洗いうがい、しっかりしなさいよ。風邪菌を移されたら堪らないわ」
「……わかってるよ」
静流は洗面所に消える瑠美子に白い歯を向け、普段よりも時間をかけ、丁寧に靴を脱いだ。靴を揃えて並べてみたりして、姉と入れ違いに洗面所に入った。
随分と不機嫌そうな表情をした女子が、透明な仕切りの向かい側から静流を睨み付けている。
「怖っ」
呟いて、静流はテキトーに笑顔を作った。
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