喧嘩

「遅い!」

「えぇ……」


 待ち合わせ時間ちょうどについて、遅いって……。


「普通一時間も女子待たせる⁉」

「いや、俺いつも時間ぴったりに来てるじゃん」

「なによ、私が悪いって言うの⁉」

「いや、その……」


 そうだと思うんだけど。


「はっきりしなさいよ!」

「……待たせて悪かったよ」

「…………、なによ、言えるじゃない」


 不満そうだな、おい。


「それより早く行こうぜ。外暑いしよ」

「その暑いなか一時間も私を待たせたのは誰よ?」

「だーも! なんか奢るから、な?」

「最初からそう言えば良いのよ。ホント気遣いが足りないわね」


 メンドクセー女……。

 ……いや、気遣いが足りない、か。


「……なあ」

「なっ、なによ⁉」


 なんで今どもったし。


「なんかホント、悪いな」

「え⁉ あ、その、付き合わせちゃったアタシの方こそ悪いって言うか、せっかくの休日に呼びだしちゃって嫌な思いさせてないかなって言うか……。べ、別にアンタのことなんて気にしてないわよ? ただ、アンタと梨子ちゃんが喧嘩してるのを見てるのかが不愉快って言うか、調子狂うって言うか……それだけだから!」

「俺と梨子の心配してくれるのはありがたいんだけど、今はそうじゃなくてだな。その服――」

「ふぇ⁉ あ、アタシの服⁉ ど、どどど、どうかなぁ⁉」

「あー、なんだ。服っつーか、……脇?」

「わ、脇? なにそれ……って、ぁ、ぁぁぁああああっ!」

「まあ、そういう模様だと思えば、なくはな……うーん、やっぱないな」



「サイッテー!」

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