第7話 遭遇

わずか数秒であったが、50メートルほど落下したところでソプラは姿勢を立て直し、風の力を全力で使いシュートを抱きかかえる。


あと少しで地面にぶつかるかのところで、何とか勢いを殺し、ふわりと地上に舞い降りる事ができた。


「はぁ・・・はぁ・・・さすがに死ぬかと思った・・・」


ソプラに抱きかかえられながら、シュートは額に冷や汗をかく。


ソプラも青ざめた顔で、「ほんとに・・・今も生きてる実感がないよ・・・」


まるで心臓が耳についたかのように、鼓動がバクバクと大きく聞こえるのがわかった。


初めて訪れた地上。


思った以上に日差しは遮られ、木上よりも湿度が高いからか、肌がべたつきを覚える。


幸い雑草が生い茂る季節でもなかった為、視界は良好であるが、薄暗さから30メートルほど先までしか見ることはできなかった。


シュートはソプラの腕から降りると、「ここ、地上だよな。」と左手の裾で汗をぬぐい、首をポキポキとならす。


「そうだね。思った以上に暗いよ。」そんな会話をしていると、ソプラの脳裏にはある記憶がよみがえる。


父の命を奪った地上・・・どう猛な生物・・・、心にはじわじわと恐怖心が宿り、ソプラの心は辺りの雰囲気に飲まれかけていた。


それを察したのか、「大丈夫だって!来た方向に向かって進めば、そのうちエレベーターに着く。そこまでは隠れて進めばいいさ!!」と明るい声で励ますと、ソプラの表情も少し明るくなり、大きくうなずいた。


二人は、元来た方向を予測し、ソロソロと歩き始める。


太い木の幹には、これまた太いツルがぐるぐると巻かれ、まるで大きな大蛇が獲物を締め上げている姿を連想させる。


何の鳴き声かはわからないが、ジージージー、ロロロロ・・・


といたるところから音が聞こえ、その度にびくびくして物陰に隠れる。


「ヤバいやつと会わないといいなぁ・・・」とシュートが先行して進んでいると、


ズン・・・ズン・・・


となにやら地面が震動しているのがわかる。


「な、なんだ!!」と二人は辺りをきょろきょろすると、


前方から灰色の大きな生き物がゆうゆうと歩を進めてきた。


大きさはゆうに4メートルを超え、大きな耳と長い鼻が特徴の生き物で、瞳は黒く輝く。



「あ、あれ象ってやつだぞ!!教科書に載ってた!!」


「あれが象か、スゲー!!って言ってる場合じゃないよ!!」とソプラがツッこむと、二人は木陰に隠れる。


ズン・・・ズン・・・と、歩く度に地面は揺れ、二人は振動で少し飛び跳ねる。


息を殺して暫く待っていると、象はどこかへ消えていった。



「すごかったなぁ!!」と目を光らせて言うシュートに、


「確かにすごかった!!でもあんなのがいっぱい出てきたら命がいくつあっても足りないよ・・・」と落ち込むソプラ。


気を取り直して二人は進み始める。


現時点で、神木のエレベーターまでは、約4キロほどの距離であった。


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