第2話 朝の光
短めの真っ黒な髪は風になびき、瞳は焦げ茶色で薄暗く、まるで日本人を思わせる。
少し大きめの茶色いブーツの紐を2重に縛り、その体にはにつかわないほど大きなリュックを背負う。手には革製の手袋をはめ、両手の指の股をぐっと合わせ、深くはめる。
木々の間からはかすかに日が差し込み、朝露に光が反射してきらめく。
朝の街はまるで宝石で着飾ったように美しく光輝いていた。
街の皆がまだ夢の中に居る頃には、彼だけは狩りの支度を初めていた。「今日もいい天気だ。いい狩りができそうだな。」
一人で住むのにはかなり大きい木造の家から少し出て、木々から差し込む光をみつめる。
スー、ハー、と何度か深呼吸をして、酸素を脳に送り込む。
大気中の酸素が濃いのか、頭がすっきりとして、瞳孔が少し開くのがわかった。
すると、隣の家からかわいらしい女の子が、のそのそと出てきた。
まだ寝間着姿で、金色の髪には所々寝癖が残っており、瞳は緑をおびている。
ふわ~、と大きなあくびをしながら、右手で目を少しこすった。
「ソプラ、今日もこんな時間から狩りに出かけるの?頑張っておっきな果物を取ってきてね。」少し眠そうな目をしているものの、ソプラを励ますようにニコっと笑みを浮かべる。
そう言う彼女の名はリフレ。ソプラの幼馴染であり、街一番の売店を営む家の娘でもある。
「あぁ、また見送ってもらってありがと。リフレはいっつも朝が早いね。」「そんなこといったらソプラはこの街一番の早起きじゃない!」そんな他愛もない会話をして二人はクスクス笑う。
「じゃあ行ってくるよ。」そう言うとソプラは、重い荷物とは裏腹に、軽い足取りで歩を進めた。
大きな家に一人で住むソプラであるが、彼が一人で住んでいるのには理由がある。
彼の母は、ソプラを出産する際に、出血が多く、産み落とすと同時に命を落とした。
そして父も3年前のある日、家畜の減少により、地上へ獣たちの肉をとるべく狩りに出かけた際、行方不明となった。
屈強な男たち5人で行動を共にしていたが、獣たちの数があまりにも多く、退路を確保するために街一番の狩人であるソプラの父が一人残った。
彼の死を確認した者はいないが、3年も戻ってこないことを思うと、街の皆は死を受け入れるしかなかった。
こうして一人で狩りに出かけるソプラではあるが、10歳を迎えてから、木上での狩りにはよく父についてまわっており、泣きながら狩りをしていた経緯がある。
今ではソプラほど木の上での狩りが上手い者はいない程になっていた。
そんなソプラも今年で16歳を迎え、両親が亡くなってからは、隣に住むリフレの家族がなにかと面倒を見てくれている。
彼らはソプラの両親とも以前から親交があり、売店を営んでいる性質上、ソプラの父が狩りで取ってきた食材を買い取ったり、物々交換したりしていた。
今でもソプラが取ってきた食材を店頭に並べてくれるなど、まるで一つの家族のように接してくれているのだ。
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