Round.05 ジゼル /Phase.10
その時だった。衛星軌道上から、巨大な花火のような砲弾が、ラーンから少し離れた上空に撃ち込まれた。
信号弾だ。
「船長、退いてくださいッ! クシャナ嬢が“ソレ以上はダメ”って言ってますッ! よくわからんけどヤバそうですッ!」
その声はラーン上空、衛星軌道上へ姿を表したナインハーケンズからの
「なんで撤退信号を出したッ! 馬鹿クロウドッ! いや、ダメか……全艦、撤退だッ!」
口惜しそうにジゼルが告げる。
「しかし船長ッ!」
それは山の向こうで、今もレイオンと一騎打ちを続けていたアーチボルトの声だった。
「黙れ。今退かなければ、今度はフィラディルフィアの
「……了解ッ!」
押し殺した怒りを含んだジゼルの声音は、アーチボルトにすら有無を言わせない。
それから赤い眼を爛々と輝かせ、ジゼルは最後にカノエを見た。
「セラエノ。それに――ミクモ=カノエ……だったか。覚えたぞ」
そのジゼルの言葉に、カノエの背筋には悪寒が走り、骨盤を蹴り上げられたかのような痺れが襲った。
「マジで忘れてください」
「必ず私の前に跪かせる」
カノエは即応で拒否するが、ジゼルの目は尋常ではない輝きを放っていた。
だがナインハーケンズとの戦闘は一先ずの決着を見たようだ。
周囲の剣戟の音は鳴り止み、シュタルメラーラがゆっくりと浮き上がると、三隻のクロムナインがそれを守るように続いた。
ラグナのエルハサルは急に相手が引いたので切っ先が困惑していたが、ほどなく状況を理解したように構えを解いた。
一方でセラエノの方はヘヴンズハースで良く見た“グッド・ゲーム”のハンドサインをゼルディムのクロムナインに送っている。
山の向こうでは、ジルヴァラに斬られたクロムナインを担いでアーチボルトがゆっくりと上昇していく。
ラーンの対空砲は沈黙したままそれらを見送り、緊張感が場を支配したまま数十分が経過した頃、衛星軌道上の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます