ジゼルの章
Round.05 ジゼル /Phase.1
首都ラーンの北部に位置するナスカ渓谷地帯。
渓谷の谷間を宇宙から見たとき、鳥の絵が描かれているように見えることから、古代太陽系の言葉を用いてその名が付けられた。
その数百mに及ぶ地層の崖で守られた深い渓谷は、身を隠すにはもってこいの場所である。ジゼル達はそこに野営地を築いていた。
「で、仕掛けはどうする?」
精度や距離はともかく、基本的に暗号化出来ず、垂れ流しである
ナインハーケンズではこの為に、五十人規模の通信敷設部隊を編成している。喧嘩が得意なだけの海賊では、長生きは出来ない。
「アーチボルトに
「アイツの艦はジルヴァラ戦で大破したんじゃないのか?」
「援護も無しに、単艦で
「ご苦労さん」
「それと、破壊された一番艦の
「ディエスマルティス探索からこっち、ろくすっぽ補給も受けないでフィラディルフィアを追ったからな。整備班には“わかった”と伝えろ――それで、その作戦、クシャナはなんと言ってる?」
「それが、作戦自体に異論は無いみたいなんでスが……」
「ジゼル姉さま」
困り顔で言い淀んだクロウドとは別のウィンドウが開き、クシャナの少し恥ずかしそうな顔が映し出された。
「どうしたクシャナ」
「深淵の連絡員が銀紫の帰還者と接触しました。古き民が目覚めれば、書架の記す因果律の地平を越えるかもしれません……」
「この通り、なんの事やらさっぱりで……」
「ジルヴァラの
顎先を触りながら、ジゼルはクシャナの言葉の意味を慎重に吟味する。
「言ってる事わかるんでスかい?」
「お前はわからんのか? 要は、イレギュラーな奴がいるってこった」
驚くクロウドに、ジゼルは然も当然といった風に答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます