Round.05 ジゼル /Phase.2
「クヴァルの
ラーン軍港管制のレーダー分析官が、比較的秘匿性の高い対地接触通信でレイオンに告げた。
首都ラーン近郊では、大地にサンバルシオンのエーテルシュラウドを走らせて、通信ケーブル替わりにも出来る。
「気になることでも?」
「サンバルシオンの
「アルハドラ様に要請した増援は、到着までまだ間があるはずだ……敵の増援の可能性があるか……そちらの観測解析頻度は準戦闘警戒レベルへ」
「随分動きがはやいですね。さすがはクヴァルの
副官のラグナが空を見上げて言った。
「先だって単艦で
「了解致しました」
基地上で待機していたレイオンが、状況を聞いてエンディヴァーを浮き上がらせ、ラーン南の海岸線に移動させる。
母艦である
「敵艦、降下体勢。
管制官が緊迫した声で告げる。その声に被さる様に、怒鳴り声の
「ラーンの
「いかにも」
「相手に取って不足なしッ!
ラーンの外縁に星型に配置された砲座から、重力子弾が閃光を引いて放たれる。
「――盛り上がってきたぜッ! もっと撃って来いッッ!
豪快なアーチボルトの咆哮と共に、衛星軌道上にあったクロムナインは流星と化す。
赤い閃光が蒼い紫電を撒き散らしながら、真っ直ぐにラーン目指して流れ落ちた。
応じて、レイオンのエンディヴァーが
「いざ、尋常に」
「勝負だッ!」
落雷を幾つも束ねたような轟音がラーン上空で弾けた。
激突の衝撃波が
紫電と暴風の中心には、流星の如き斬撃を受け止めて、ラーンを護り立つエンディヴァーの姿があった。
「やるじゃねぇか、おっさんッ!」
「ミクモ殿に伺ってはいたが、些か口の悪い男ですな」
レイオンはその顔に、好敵手を見つけて喜ぶ、修羅の笑みを浮べている。
「――破ッ!」
鍔迫り合いのままエンディヴァーは突如、衝撃波を放った。アーチボルトのクロムナインは不意のことに、そのまま一気にラーンから少し離れた平野に叩きつけられる。
「なんだあッ!? ただの
その言葉を聞き待たず、地上に片膝を着いたクロムナインへ、容赦なく追撃を敢行したエンディヴァーの
「“バッシュ”と言う、接触した相手を吹き飛ばす業ですぞ。
再び鍔迫って、エンディヴァーは着地。身を屈ませ膝を相手の懐に踏み込むと、今度は下から打ち上げるように“バッシュ”。
鍔迫った
「ふざけた戦い方をッ!」
アーチボルトは器用に空中で姿勢制動。脚部先端のランディングフレームが地面を削りながら着地。その隙を逃がさず、再びエンディヴァーが斬り込んだ。
「引き離さんと、戦闘地震の余波や、
「せせこましいぞッ! シンザはこんな奴ばっかりかッ! まともに斬り合え、このやろうッ!」
エンディヴァーの
そもそも並のヘルムヘッダーであれば、地上に叩きつけられた次の瞬間には致命打を与えている。
「完全に体勢を崩しての二度の打ち込みも、キッチリ受けて見せる……奥の手で一気にケリを付けるつもりだったのだが……ミクモ殿の言う通り、この男、天然の達人の類ですな……となると――姫様」
アーチボルトのクロムナインと激しい
「姫様やめなさい。なんです?」
「ミクモ殿の発進をお急ぎ下さい。こちらは、ちと梃子摺りそうです。ファーン軌道上にも怪しげな動きがあります。それに、
喋りながらも、レイオンの意識の大半は、アーチボルトのクロムナインとの
それだけの強敵なのだ。
「わかりました」
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