Round.03 アトマ /Phase.6
アトマが自分の座席に納まりコンソールを操作すると――ゴウン――と、クラウンシェル筐体と同じ音と共に、座席がせり上がり始めた。
せり上がる座席に座りながら、カノエは妙な安心を感じていた。見知らぬ世界の中にあって、見知った
毎日のように遠野ミストへ通った記憶が、今のカノエの、唯一の頼りだった。
「この
上昇する座席の上で、カノエは
【えっと、第一メインは
「初心者かよ。元々は船の制御システムだろストラコアって……まあ、僕も五百戦弱ぐらいしかないビギナーだけど」
【五百戦!? 冗談でしょ? いくら
「ヘヴンズハースでの話だって」
【そのヘヴンズハースって、プラネットエミュレータのアプリケーションか何か?】
「よく分かんないけど、多分そういう感じ――
【この際そのシミュレーターで五百戦弱に期待するしかないか……はぁ……こういうのを“ツイてない”って言うのかな】
「アトマ、敵の位置は?」
操作し始めると、いつもの調子が戻ってくるのを感じていた。すこし勝手は違うが、ゲームにはなかった細かいところは殆ど自動化されているようで、クラウンシェル筐体との操作感に、大きな差が無いのがカノエの自信に繋がっていた。
【お?】
急に指示を飛ばしたせいか、アトマがきょとんとしている。
「アトマ、“索敵”」
【あ、はいはいはい。敵艦出現位置、衛星ファーン極天座標、こちらとの距離一八○
「ハイは一回。
【あたしも初めてなんだから、いっぺんに言われても困るってば】
「ゲームのチュートリアルって、大事だったんだな……」
【なんの話よ】
「行き当たりばったりは止めよう、と言う話」
【敵艦、光学視認距離。見えるよ】
「方向!」
【二時方向、プラス三十度。艦種はクロムナイン】
「こっちの、ちょい上……見えた。とりあえずセオリー通り、散らして見るか」
カノエの知るヘヴンズハースでも、
複数に囲い込まれない為の対多数におけるセオリーだ。
四肢の関節と同じ、N字型をした大型のアームで接続された
開いた銃口はすぐさま小型の重力子弾を連射。紫電を曳いて、飛来する三隻の
ヘヴンズハースであれば――ジジジ――と言う電磁加速による発射音が聞こえるところだが、ここは真空の宇宙でゲームのように音は響かない。
「どう?」
【散らばった】
「うん、まあ。もうちょっと雰囲気っていうか」
【敵艦散開! ……こう?】
「うん、そんな感じ。一番近いのにロックオン。
【まって、一機向ってくる!】
「――! 後退回避!」
三隻のうち、散開時に
咄嗟に防御入力された
「
敵
「うぇ? えっと、割とセオリーだと思うんだけど」
ほとんど手癖で放った攻撃を、そう卑下されるとは思わなかったカノエは困惑した。
「セオリーだぁ? ざけてんじゃねえぞッ!
その最速の突撃で詰りすぎ、鍔迫り合いになった間合いを放す為、その男の
「なんつー大雑把なヤツ!」
蹴飛ばされた勢いで宇宙を旋回するジルヴァラの姿勢を、アトマが立て直すのを見計らって、
しかし、足場が無い宇宙では姿勢が安定しない。
【踏ん張りが利かなくて、姿勢が制御しきれないってば】
「そうだった。
振りかぶった勢いで、ジルヴァラがグラリと傾き旋回しかける。姿勢制御していたアトマが悲鳴を上げた。
「
威勢のいい怒号と共に、エーテルのスラスト光を曳くクロムナインが強襲する。
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