Round.03 アトマ /Phase.5
「なんだ!?」
聞き覚えの無い警報に、カノエはココへ来て、ようやく慌てたのかもしれない。
【特定のストラリアクターを観測した時に鳴るようにしておいたアラーム。見つかっちゃったかな……捕捉されてる状態での星系内の転移だったから、時間の問題だったけど】
「誰に見つかったって?」
【クヴァルのナインハーケンズ。せめてレンドラに辿り着けていたら、なんとかなったっぽいんだけど】
アトマがあっさりと諦めたような言葉を吐いた。
「僕が悠長に宇宙遊泳してたせいか……」
追われているなら追われていると、先に言っておいて欲しいものだ。
が、今更そんなことを悔やんでも仕方ない。そもそもカノエは今の自身のことすら、把握できていないないのだから。
【別に宇宙遊泳してなくても追いつかれてたよ。出現位置が相手の
アトマが両手を挙げるポーズで、事も無げに言った。
「そんな簡単に諦めるなって……ナインハーケンズって言うと、シンザ同盟のシナリオルートで出てくるやたら強い敵か。どうする?」
【どうするっていわれても】
ナインハーケンズの名は、ヘヴンズハースのストーリーミッションでも登場する。
海賊行為により、主惑星の資産を優に超える財力を溜め込むクヴァル
だがそれは、ゲームのシナリオの話。
「アトマは
【通常航行ならともかく、あたしの
「CPU戦がどう頑張っても、対人練習にならないようなもんか」
対戦ゲーム界隈では、CPUとの対戦では駆け引きの練習はできないとされている。精々コンボ練習が関の山だ。
【わかる言葉で話そう?】
カノエの例えに、アトマが訝しそうな顔をした。
「ヘルムヘッダーが居れば、どうにかなるんだな? そうだ、この
シートを見ながらカノエは言った。
仮に初見で操作するなら、当然、相対的に操作が簡単な強機体の方がいくらか勝ち目がある。
状況は半分も判っていないと思うが、少なくとも、このままナインハーケンズに捕まると、カノエにとって良くない可能性が高いことは想像できた。
それに、アトマが即座に事態を投げ出したことが、どうにも気に食わない。
【六千年級
この非常時にこの妙な呑気はどこから来るのか。そもそもヒトではないので、感覚が違うのだろうか。
カノエの知る限りは、そもそも
「六千年級ってと、確かコストの一番重い高性能艦種だな……なら、何とかなるか?」
ヘヴンズハースでも
今はゲームの
「……よし、僕が操縦する。
カノエは覚悟を決める。
腹を括ると、後は速かった。ここへ来てから、遠巻きに見ていただけの
【いやいやいや、ヘルムヘッダーでもないのに無理だって】
カノエ自身、むちゃくちゃだとは思うが、今は思い出になってしまったセラが、いつもの笑みで囁くのだ。「勝負を仕掛けるタイミングは――躊躇わず、出し惜しみも無しだよ」と。
「まあ、よくわかんない状況だけど……ヘヴンズハースと一緒なら、どうにかこうにかやれなくも――早くあげて。急いで」
会敵する前にヘヴンズハースの経験が通用するのか、ちゃんと調べて起きたかった。
どう考えてもこんな巨大な艦を、アーケードゲームと完全に同じノリで動かせるとは思えなかったからだ。
【……壊さないでよ?】
アトマも腹を括ったようだ。或いは制御システムであるストラコアとして、他に選択の余地が無い事を認めたのかも知れない。
「まったく保障できない」
カノエは真面目、且つ真摯な表情で、キッパリと答えた。
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