閑話

夏の後先

秋に燃ゆ

くれなゐ、こがねの落とし胤

錦の彩も来たる静寂しじまが為に果て

朽ちては雪の枕となりぬ

賭する命の優しげな

面影ばかり糧として


冬に臥す

ましろ降りたる燈幻郷

秋の形見に遠とき春を夢見ては

ひと世隔つる季節の奥へ

過日の殻を弔いに

種火とうずむ花ごも


春に醒む

もえぎ、わかくさ、野辺送り

去りし冬との別れ示せる火葬式

古き実りの揺り籠焼きて

嬰児みどりご遊ぶ燎原に

殉情せんと薫る風


夏に哭く

てきれき、へきらの天獄あまひとや

長閑けき日々に想ひ涸れゆく陽晒しの

色も褪せにし空蝉の裡

あな咲き詰むる無花果の

花よ、共にぞ生きめやも

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