妖刀

胸裡に秘めたる言の刃を

解き放つなら誰に宛てよう

もの言わぬ物と生まれし我が身にも

何が憑いたか妖刀あやかしがたな


焼け果つる焔の泉より芽生え

舞い散る火花の茎となる

花と咲くより刃であれと

望むる人の望みの侭に

手折らるる鉄の命を禊ぎたり

研ぎ澄まされゆく鋭さを

己が心と若き鋼は悟れずに

丁子の香りにほろと酔う

鎮まらぬ鼓動に重ねる幻は

骨身を打ちし相鎚か

朴の白木を枕とし

夜長を静寂に預けても

鳴りやまざりし揺籃歌


命を翳し斬り断つ程に錆は濃く

心を磨りて細る想いに我を知る

人より生まれて人ならず

物と生まれて物にもなれず

果たして私という者を

誰が認めてくれようか

きみに届かぬ刃の声を閃かせ

浮世に結ぶ戀を綴りて

もの言わぬ物と生まれし我が身をば

物語らんや妖刀

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