緑陰に凪ぐ

朝顔は緑の簾を編み終えて

庇に影を立て掛けた

光降る眩き欅の濡れ縁に

暇を告げる夏の曙

生々と輪唱する蝉達の下

ひとつ、ふたつと抜け殻を数え

眠りに至れぬ微睡みで

気怠い溽暑をやり過ごす

水草に隠れる壺中の金魚さえ

今は只々、羨ましい


冬ならば焔と実る七竈ななかまど

吹き零る花は炎天の白雪か

切子に落とした氷の響き

風鈴の音にも聞き紛えども

死せる風は何をも揺すらず

うずたかく不動とそばだつ雲の峰

慰めに見出だす涼は他愛なく

ひと夏の命に非ぬ身を余し

伏して夜陰を待ち侘びる


簾の裏より垣間見し

覇者の天下に無聊を託つ

冬には恋しき日向とて

夏には望む訳もなく

じりじりと世界を焦がし

煮えた空気を絡ませて

鮮烈な彩を焼き上ぐ光

傍らで存う影のあえかなる

その領域に居を借りて

熱砂に踊る陽炎を

他人事よと美しむかな

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