夏告の日

騎手は往く

蹄と踊る青の鈴

春夏の縁を踏み分けて

左手ゆんでに取りし朱の弓

矢継ぎも早に放てる彩の

軌跡で描くなかご千条

射貫かんや千紫万紅

青葉の波を泳ぐが如し

駒の蹴立てる花飛沫


麗らかなりや然りとても

山際を塗り籠めんとやよな曇る

西夷旅団の寄せ来る影は

ときを知らしむ立夏の顕れ

砂塵嵐に荒ぶ彼方の広漠を

離れて久し異邦人

天路を渡り海原を越え

壮熟の春を狭霧に葬れり


風切りの音にすら射れず

太刀風ですら断てぬなら

次なる季を嘶き呼ばえ

雨よ、雨

降れよ、降れ

鮮やかな世界を覆う霧を裂き

我らが土へ砂子を連れて

露は宿れり草若葉

その根を仮の枕となさば

旅の穢れも落ちぬべし

北へ駆け去る駿馬が遠く

踏み鳴らす蹄の音は子守唄

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