再生記
夜は褪せて有明は銀鼠空
花曇りの淑やかな雨を浴び
初々しく咲い始めた蕾の叢雲
神の社は林の奥座に黙しては
煌々と列を成したる灯籠を
巫の如くに侍らせている
花に雨に霞み揺らめく朧の火影
異界との境を護る塞のように
薄闇の真中に浮かんでいた
根の国を足下深く鎮めつつ
社を囲い樹々は天に手を伸べる
朝を告ぐ囀り達の雨宿は
嫋やかな花の雫に枝垂る天蓋
霖雨は優しく光を断ちて
未だ眠たげな白皙の頬に
通う色香の幼き様を愛おしむ
かつての春は黄泉還り
胴吹きの若草からも花幾輪
蜜をと啄ばむ番の雀に散らされて
黒褐と湿る樹肌に春雪を積む
雲居の枝で濡れ羽の鴉はかく語る
今日の花とて明日の夢
目覚めゆく春華の影に命を結び
泡沫の揺籃に身を託すが故
時の限りを葉芽は見知る
苔生した石畳に降る星霜に
からからと回る四つ羽の風車
散る花も落つる葉もまた
等しく輪廻の欠片であれば
夢よりも幻よりも美しく
移ろえる浮世の彩は万華鏡
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