夏よ

死にゆくだけの命に生まれ

冬に向かい生きている

この世の寂しさを春に知り

散り損なって夏を迎えた

燃ゆる緑は美しかれど

私はそのような色を持たない

重なる樹々の枝葉に隠れ

密やかに息を潜めるだけの

花実にならぬ世捨人

浮世の風を厭いながら

土に戀して嘆くばかりの

蕾開かぬ世迷人


憂鬱な秋が来る

散りもせず染まりもせず

冬を待つしかない身には

これより来たる秋などは

苦しみの季節に他ならない

春に生まれた事を悔いるなら

縋る先は冬以外の何処にある


夏よ

例えば、秋を殺したら

きみは冬に逢えるのか

例えば、秋を殺したら

私はこのまま死ねるのか

秋に流す泪を知らず

私はこのまま死ねるのか

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