第12話 データの種類となろう書籍の関係は
今回は、編集さんとのやり取りから少し離れてデータのお話です。
これからのやり取りで何回も出てきますから、ちょっと整理してみましょう。
例えば私が書店で本を買ったとします。
そこから取得できるデータを列挙してみます。
1.商品:どの本を買ったか。ついでにどんな本買ったか。
2.場所:どこで本を買ったか。店や棚の配置も含みます
3.支払:何で支払ったか。現金かカードか、その他か
4.時間:いつ買ったか。朝、昼、夕方
5.属性:買ったのは、どんな人か。老若男女、職業etc
話を簡単にするために、5つの項目で取ったとします。
これはPOSデータの基本ですね。消費財については普通に取得されています。
当然ながら、書店では1-5までのデータを活用しているかはともかく、取得することは可能なわけですね。
ところが出版社の話を聞いてみると、「1」と「2」の限定的な情報しか持っていないようのです。
本が何冊売れたかは、納品要求と支払いがあるからわかる。
送付状から、どの地域で売れたのかもある程度はわかる。
ですが、言ってしまえばそれだけなのです。
書店を持っている出版社さんはまた状況が違うでしょう。
それに大手の出版社さんは書店からデータを買い取る契約をしているかもしれません。
ですが、私がお会いしたラノベを扱っている部門では、どうもそうしたことはしていなさそうでした。
これではデータで売れ線の予測などできるわけがありません。
ところが皮肉なことに、売れた数を総合したサマリーデータで予測できるものもあるのです。
それは「売上の伸び」と「打ち切り判断」です。
「初速」という言葉を聞いたことがありますか。
近年の統計の進歩とデータ血奇跡で、初日、初週の売上を見れば、その後どれだけ売れるかを高い精度で予測できる、その判断の根拠となるのが「売上の初速」です。
出版業界では在庫が最大のリスクです。そのリスクを減らすための手法として売り上げ後の予測手法は発達してきました。
そして、なろう書籍は初速に優れる上に、ポイントやランキングのデータによって出版数見積もりのリスクが低い、と評価されているのです。
現在のなろう書籍の隆盛は、初速を重視する出版社の姿勢と統計の発展あたりに関係がある。
私は、そのように理解しています。
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