第2話 コーヒーブレイク

 この世紀末女学園に赴任した臨時教師”剣 守琉”つるぎ まもるは野生化した彼女を人間社会に戻すための教室を開いていた


「ああ、胃が痛い・・・」


 そう剣がまだ外で騒いでいる女子を見て、ぼやいているとボーイッシュな女生徒”アヤ”が剣に声をかけた


「剣先生、それでしたらコーヒーをお控えになられたらどうです?」


「いえ、それは困ります。ここでの唯一の楽しみなんですから」


 ふふっと笑ってアヤは話を続けた


「ふふ、そうやって無理してるから胃を壊すんだよ先生。今はもうココの唯一の先生なんだから、もっとお身体を大切にしてもらわないと」


「胃には悪いでしょうがストレス解消に良い。時には毒も薬になりますよ」


 そんな事を話していると、外から大きな声をあげながら教室に入って来た。・・・・教室とは言っても彼女達と教師を合わせて3人しかいないし、実質ただの避難所なのだが


「アヤおねぇさま~♪手に入れましたわ!」


「ついに見つけたんだね」


 教室に入って来た小柄で元気な女生徒”ミキ”は嬉しそうに袋をアヤに差し出した。返り血が付いているがここでは気にしたら負けだ


「はい!コーヒー用のミルクですわ」


「よくやったねミキ」


 アヤはミキの頭を撫でた


「へへへ♥」


 剣先生は沸かしておいた湯が沸騰しているの見ながら二人に呼びかけた


「ちょうどお湯が沸きましたし、お茶にしましょうか」


「はい、先生」


「アヤお姉様!わたくしがお入れしますわ!」


 そう言ってミキはインスタントコーヒーを三人分用意してくれた


「お茶菓子はこれにしょうか」


「この間の調理実習で作ったドングリクッキーですね」


「きゃは☆今日のお茶会は楽しい物になりそうです」


 女生徒二人は目の前のコーヒーの色をよく見て、香りを嗅ぎ楽しんでいる。剣はこの光景を見て ”ああ、こんな状況になってもお嬢様なんだな” と考えながらミルクをコーヒーに入れた


「さて、ではさっそくミルクを入れようかミキ」


「はい、アヤお姉様」


 二人もコーヒーにミルクを入れ始めた。その様子を見て剣は ”あれ?そういえば何でミルクを入れる前に香りを嗅いだのでしょう?入れた後との違いを楽しむため?” と考えながらコーヒーを飲んでしまった


「っこれは!」


 ミキより早くミルクを入れたアヤが叫んだ


「飲んではいけません!!毒が入っているよ!!」


「え!?」


「なんです・・・ゴボォ!」


 剣はもがき苦しみながら倒れてしまった。ミキが涙を浮かべ泣きじゃくる


「剣先生っ!まさかわたくしが強奪して来たミルクに毒が!?」


 アヤがそっとミキを抱いて慰めた


「いいえミキ、それは違うよ。むしろミルクのお陰でボク達は助かったんだ」


「でも!コーヒーの色と匂いには何の問題もありませんでしたわ!ミルクに入っていたとしか!」


「ミキこれを見て」


 アヤはミキのコーヒーにミルクを入れたすると・・・


「これは!ミルクが粒状に!?」


「そう、ミルクに毒が入っていたのならコーヒーに入れる前にミルクに何か異常が無いとおかしいよね」


 コーヒーに薬を混入されるのは良くある事である。コーヒーは色が濃く、香りが強いために薬物を混入されてもわかりずらい。


 だが例外もある。ある種の毒物、青酸カリなどはミルクの油分を分解してしまう為、ミルクを粒状に広げてしまうのだ!


 コーヒーや紅茶にミルクを入れるのは毒物から身を守る護身!そうでなくても飲み物をワインの様に色と香りをしっかり確かめてから、少量を口にふくみ口の中で転がす様にして異常が無いか確かめて飲むのは――――


「相手は相当な腕前ね」


     「はいお姉様、わたくし達の目と鼻を欺くなんて」


 ――――世紀末女子としての当然の嗜みなのだ!!


「アヤお姉様!このままでは弱った先生の気配を感じてハイエナ達は寄ってきますわ!!」


「そうだね!移動するよミキ!」


「うう・・・グブ」


 剣先生あしでまといはおいて行かれました

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