⑬ノロノロ呪

「河原そのティーシャツ可愛いな、おい」

「これママが用意したんだけど似合ってる?」

「河原のママセンスあるな。今度会わせてよ」

「やめて、ママ恥ずかしがり屋だから」

「河原よりは、きっとそうでもないよ。ほら、ほら」

「うわちょ、ちょ、止めてよそこっ」

「河原お前、可愛い反応だな。てか河原の家すら行ってことないわ」

「そんな、大したものないよ」

「いいだろぉ行かせろよぉ、河原」


席を移動した篠原が河原の机に寄っかかり姿勢を正して河原の肩に手を置いて断りもなく言う篠原が河原に話しかけると顔が執拗に砕ける篠原の顔は私と別れても河原だけ見ていられればいいと言うように休み時間の度に河原の席に私の席を避けて通る篠原の声が気にしない演技して聞こえてくる。私と付き合っていた時の私が何を言っても一言二言で会話が終わり時には頷くことしかしなかった篠原の高校デビューなのか何なのか勝手にコンタクトレンズに変えて痛いとか小さく呟いていた目を輝かせ顔全体を赤くして私のより明らかに積極性を誇張して篠原の世界に河原しか居ない近さで話す。河原と篠原が出会った時期も私が篠原と知り合った時期も一致してるはずなのに私の時は休み時間になると私の隣に来ることなんて無かったのに私の肌に触れることは一度も起こり得なかったのに「河原は何か特別な感じする」と河原の居ない私と篠原の時間で独白してきた何てことないと思っていた半年前の学校帰りを思い出す。私が今とは正反対に好きだった篠原との二人の時間は篠原の中では河原に元から蝕まれていて私から篠原の居場所へ向かうことを良いことに私を無理なく流して本命は河原のことばかり私のことも考えずに組み立てていた。私と河原と篠原が三人でその場に居る際も篠原は河原にだけ話し掛けて話題が生まれれば河原に感想を求めて河原に身体を向けて十秒置きに河原の背中や腕を掠める程に触り出す。篠原が河原が眼中の中心だと薄々勘付いてきた頃篠原に自分の口から語り掛けなくなった私が居たにも関わらず変わらず河原に汲々とした篠原を見て私は急に冷めた。



「河原最近家で何してるの?」

「最近寝てばっかだなぁ。昨日妹とコンビニ行ってきたくらい 」

「妹かよ。河原そんなに暇なら彼氏でも作んないの?」

「男かぁ……今は別に作りたいと思わないなぁ。女友達と居るが安心するし」

「えぇじゃあ河原彼女はどう?わたしそういうのに偏見ないから」

「えへぇ、彼女ってちょっと……」

「まぁでももし河原に彼氏が出来たらわたしショックで寝込むわぁ」

「まじ?そういう風に思ってくれてるの?嬉しいわぁ」

「当たり前だろぉ。わたし河原のこと好きだから、てへ」


は?彼氏?彼女?知らねぇけど死ね。篠原死ね。毎回毎回語頭に「河原」付ける篠原お前。河原との会話しか見えてない私を見向きもしない篠原お前。私が篠原お前に時間を散財したことも忘れて河原に貢ぐ篠原お前。私と付き合っていた時の配慮も無かったことにする卑怯者の篠原お前。お前のせいで私の生活する速度に支障を来すのだロ。お前が今言った「そういうの」って?おい具体的に言えよ篠原お前。女性同士の恋愛延いては同性愛のことだロだったら何で「そういうの」とまるで禁忌を扱うように明言を控えるべきであるように言うんだよ遠回しに表現する必要ねぇだロそれにそもそもお前達の軽口溢れる会話の流れで気軽に盛り込むのが適切な話じゃねぇだロ。更に言えば異性愛には偏見がないのが当然で同性愛には偏見があっても仕方ないという実際の風潮含めてお前の言い方が的外れどころか上から目線にしか聞こえないだロ。本気で同性愛を考えたこともない癖に認めてるとか上っ面の適当なこと言ってんじゃねぇぞお前。

篠原おいお前まじで。

自殺しロ。早く自殺しロ。自殺を考慮しロ。どうせお前は何も考えずに生きているだロ。だから消えロ。考えて生きる人にとって考えないで生まれた発言が生み出す影響は悪でしかないだロ。何となく生きてるんだったら生きるの辞めロ。まじで息絶えロ。私がお前と別れたという主観を切り捨てたとしてもお前のその口調と態度は万死に値するだロ。何事も深く考えていないから周囲の規律にただ従っているだけで姿勢を正して考えている気になっているのかどうかは知らないけど結局考えていないのだロ。同性愛を馬鹿にしたことがお前の思慮の零を決定的に徴している上私の善なるエゴを加味すれば私の気持ちも知らず無邪気に燥ぐお前はひたすら何も考えいないだけだロ。考えている人は自分の考えを反映させた発言をしようとするから話の切り出しに慎重になるがお前の即席の発言は口から出任せに等しくてしかも反感を買う程筋の違えた最悪な発言だロ。何もない生きるだけ無駄な人生を送ってる徴憑が口外されたのだロ。正にそういう何も考えていない篠原を一員とする人々に限って考えている人を何考えているのか分からないと放棄したり意味分からないと嘲謔したりするのが庸俗だロ。何考えてるのか分からないのはお前が何も考えていないからで意味が分からないのはお前の人生に意味がないからだロ。充填された観念で対立するならまだしも何もないお前が私を否定するかの如く無視して何もないお前を何もない河原に同調の糸に括って互いに肯定しようとしていると見受けられるお前は自分の無さを晒しているに過ぎないだロ。何時も何時の日も河原河原と盲目に繰り返して何も考えていないことすら考えないよう心掛けるお前はお前として生きる趣意がないだロ。何で生きてるんだよ幽明相隔てロ。入寂しロ。消えロ。お前の映像も音声も授業中の咳払いも全てお前の何も考えてない産物だから私の考えを滞らせ憤らせるだロ。お前の存在が私を挑発して逆撫でして掻き毟ってくるのに授業中だから考えることしかできないだロ。だからせめて篠原お前を呪ってやロ。こんな時の為にお前と撮った記念写真を筆箱から取り出すだロ。顔だけ手術した光沢紙の表側を赤インクで炒めるだロ。お前は死なないと駄目だロ。私が犯罪する前に自殺すべきだロ。それでも何も考えないお前だから自殺も考えられないのだロ。自殺くらい考えてみロ。考えようが考えまいが何にせよ消えロ。お前の全部が崩壊しロ。

お前と付き合っていた過去をもはや信じないだロ。



「河原、彼氏出来たらエロいこととかするのかよ」

「えぇ、いやぁどうだろ。しちゃうのかなぁ」

「河原の裸とか興味深いんだけど」

「いやぁん。てかどうせ来月の修学旅行で見ることになるでしょ」

「あっ。河原天才か。じゃあその時河原の身体上から下まで存分に注視するから」

「分かった、ならこっちも篠原ガン見するわ」

「いいよ受けて立つ。わたし河原よりスタイル自信あるし」

「おぉ言うねぇ……あれ、でも今回は確か民泊だから多分二人は入浴できないじゃん」

「大丈夫大丈夫。二人で入っちゃおうよ」

「まじ?まぁそこまで言うなら入るか」

「旅行先で裸の付き合い、しよーぜっ」

「おうおう……今だってチラ見せできるけどね。ほら。」

「……河原、お前可愛いな。」


こロす。こロす。こロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロすこロす。すごくこロす。すごくこロすすごくこロす。すごくお前こロす。すごくこロすお前こロす。すごくこロすとノートに書く。血色でノートにお前こロす。書いて書いて書いてこロす。書けば書くほどこロすこロす。こロすと書けばおそらくこロす。こロすの文字がノートをこロす。お前をこロすためなのにノートをこロしてどうこロす。お前をこロすためだからノートをこロしてお前こロす。お前はこロす早くこロす。早く早く早くこロさないとお前は早くこロさないと。早くならないとこロさないとお前をノートでこロさないと。こロすないとこロすこロすこロすないとこロすこロすこロすないとこロすこロす。お前の声が聞こえるならばお前の全てはこロさないと。お前の顔が覗けるならばお前の全てはこロさないと。こロす。こロす。こロすこロす。こロす。こロす。こロすこロすこロすこロす。こロすこロす。こロすこロす。こロすこロす。こロすこロすこロす。こロす。こロすこロす。こロすこロすこロす。呪いこロす。呪いこロすこロす呪いこロす。呪いこロす呪いこロす呪いこロす。呪いこロす呪いこロす。こロすこロす呪いこロす。呪いこロす呪いこロす呪いこロすこロすこロす呪いこロす。呪いこロす呪いこロす。呪いこロす。呪いこロす。呪いこロす。こロすこロす呪いこロすこロす呪いこロす。呪いこロす。呪いこロす。こロす呪いこロす。お前こロす呪いこロす。呪いこロすのお前だロ。ノロ。ノロノロ。ノロノロノロ。篠原ノロいと私ノロ。篠原ノロさの私ノロ。篠原ウイルス感染ノロ。ノロノロノロノロ。ノイロノロ。消えロノロ。ノロノロノロノロ。篠原ノロノロ終いだロ。篠原お前こロすため。ノロノロノロノロ祟ってやロ。ノロノロノロノロ唱えてやロ。願いと魔法で消してやロ。ノロノロノロノロノロノロノロ。呪い殴ってお前こロす。お前こロす呪いこロす。口を塞いでこロすだロ。ノート呪って篠原ノロノロ。伸び切る体に釘打てロ。周りの空白ノロノロノロ。ノロノロノロノロノロノロノロノロノロ。お前をノロった呪いにノロってノイローゼにしてノロノロノロ。お前をノロった呪いにノロってノイローゼにしてノロノロノロ。ノロってノロった呪いにノロってノロったノイローゼがノロったノロノロ。ノロってノロった呪いにノロってノロったノイローゼがノロったノロノロ。ノロノロしてる呪いにノロれてノロノロするからノロノロノロノロいつまでたってもノロノロノロノロ。いつまでたってもノロノロノロノロいつまでたってもノロノロノロノロ。いつもノロノロ呪いのノロなノロ呪いのノロノロしてるのノロのノロ。いつもノロノロ呪いのノロなノロ呪いのノロノロしてるのノロのノロ。ノロノロしてるの呪ってノロノロ呪いのノロノロしてるの呪ってノロノロ。ノロノロしてるの呪ってノロノロ呪いのノロノロしてるの呪ってノロノロ。ノロノロしてるの呪ってノロノロ呪いよノロノロしてるの呪ってノロノロ。ノロノロしてるのノロノロしてるのノロノロしてるのノロノロしてるのノロノロしてるのノロノロしてるのノロノロしてるの呪ってノロノロ。

呪って篠原お前のノロ。


篠原お前は


      ロロロロロロ

ロロロロ  ロ    口

ロ  ロ  ロ    ロ

ロ  ロ  ロロロロロロ

ロ  ロ   ロ  ロ

ロロロロ   ロ  ロ

      ロロ  ロロ  ロ

     ロロ    ロロ ロ

   ロロロ      ロロロ



いこロす。


篠原お前なんて


   ロロロロロ

   ロ   ロ

   ロ   ロ

ロ  ロロロロロ

ロロ

 ロロ  ロロロロ

  ロロロロ  ロ

     ロ  ロ

     ロ  ロ

  ロロロロ  ロ

 ロロ  ロロロロ

ロロ

ロロロ


いこロす。


篠原お前だから



ロロロ      ロロロ

ロ ロロ    ロロ

ロ  ロロ  ロロ

    ロ  ロ   ロロロロ

    ロ  ロ   ロ  ロ

   ロロロロロロ  ロ  ロ

   ロ    ロ  ロ  ロ

   ロ    ロ  ロロロロ

   ロロロロロロ


いこロす。


篠原お前早く


      ロロロ

        ロ

       ロロ

ロロロロ  ロロ

ロ  ロロロロ

ロ  ロ

ロ  ロ

ロ  ロロロロ

ロロロロ  ロロ

       ロロ

        ロ

 ロロロロロ  ロ

 ロ   ロ   

 ロ   ロ   

 ロロロロロ


いこロす。


篠原お前こうやって



      ロロロロロロ

ロロロロ  ロ    口

ロ  ロ  ロ    ロ

ロ  ロ  ロロロロロロ

ロ  ロ   ロ  ロ

ロロロロ   ロ  ロ

      ロロ  ロロ  ロ

     ロロ    ロロ ロ

   ロロロ      ロロロ



いぶっこロす。




篠原が早く死にますように。

























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