『   』

空が歪んでいたのは、雨が降っていたから

灰色の雲も、雨粒も、みんな幼馴染

青い空が眩しくて、うんざりしていた

真っ黒な光を待っていた


私の世界の片隅で流れ落ちた、

真っ黒な、透明な、雫

逃げ出そうとして下まつげに足を引っかけた眠気を

逃すまいと、目を閉じる


海が嫌いなのは、水がしょっぱいから

閉じたまぶたの下で命が生まれて

今夜も長い物語を見る

始まりは私の涙で 終わりは私の始まりだ


揺れる風鈴を合図に、夜が明ける

世界はまだ終わってくれない

冷たい部屋の中で死んだまま、

みんなが赤くなる春を待っていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る