第6話 名も無き神と人の話

 中心に大きな穴の空いたとある大陸には七柱の女神とそれが創った「人」と言う種族がともに暮らしていた。


 ある日、女神達は神殿で一人祈りを捧げる青年に興味を持った。


 青年はそれからも毎日足を運んだ。時間帯はばらばらでも毎日。


 そんな青年の願いが、明日も良き日でありますようになどといった、神にとってはちっぽけな物だった。


 女神達はそんな欲のない青年に惹かれていった。


 女神はその青年を女神達の側近として神格化させた。


 周囲の「人」はそんな彼に羨望の眼差しを向けていた。いつか自分もあの女神様方に近づきたいと。

 

 それから「人」は、彼と同じく毎日神殿へと通うようになっていた。どの「人」も女神様方について行けますようにと。


 しかし女神がそれを受け入れることは無かった。「人」の祈りにはそれにわずかながらも下心が混じっていたから。


 「人」がいくら祈っても女神が受け入れることは無かった。やがて「人」が側近の彼を見る目は羨望では無く妬みに変わった。


 しかしいくら祈っても女神は聞いてくれない、やる意味も無いだろうと「人」は神殿には通わなくなり普段の生活も覇気が無く無気力になっていった。


 あるものは神に見捨てられたと鬱になり、

 

 あるものは食欲を満たすため食い荒らし、


 あるものは側近の地位や様々な物を欲し、


 あるものは自暴自棄陥りに女をむさぼり、


 あるものは全てを諦め自堕落な生活をし、


 あるものは女神達に対して怒りをぶつけ、


 あるものは自らを偽り空虚に生きた。


 側近はそれを見て嘆きもせずにただそれを見ていた、今まで向けられてきた羨望と妬みで変わってしまった。


 彼は自らを特別な存在だと思い込み女神に反逆し王になろうとした。


 それを知った女神は彼を側近から外し彼と欲に溺れた「人」を悪魔と称し、古代魔法を使い大陸の穴へ落としその中を封印し塔を建てた。


 女神達はその後「人」とは関わるべきではないと考え、

秩序は「人間族」が

法 は「亜人族」が

欲 は「魔人族」が

司る用にと分け天界からこの大陸を傍観することにした。


 今でもその悪魔達は塔の奥底へ封印されている。そして悪魔達のことをそれぞれ、 傲慢、暴食、憤怒、嫉妬、強欲、怠惰、色欲とした。


女神のことをそれぞれ、

節制、純潔、忍耐、寛容、勤勉、忠義、慈愛

とした。

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