エピローグ 次

次は

やぁ、この島地団地島のことを小指の先程でも理解できただろうか?

もしできていないというのなら、それでもいい。

この島では、開示されている出来事が全てではないからね。きっと、あんなことが起きていた最中にでも、ほかの場所で何か起きていたはずさ。

しかし、それには誰も触れはしない。だってただの日常の1部だ。誰が気にして噂するんだい? 自分に関係の無いことは、黙って心の中に留めておきなよってことさ。と、言いたいところだけど、やっぱり人は噂好きな生き物だから、どうしてもそれを完璧に止めるなんてことはできないだろう。


人は毛嫌いをする生き物で、理解できないものを排除しようとする生き物だ。そう考えると、まるで世界を動かしている頂点にいると思っている人間が、僕には途端に愚かな生き物に見えてくるね。よっぽど、日々好奇心の目で世界を見ている幼い子供の方が、僕には素晴らしい人間に見える。いつ命が奪われるかわからないのに働く蟻が、僕には素晴らしい生き物に見える。

人は大人になっていくほどに、退化していく。人は理解を辞めてしまえば退化するだけ。


キミはこんなことを思ったことないかい? 「自分には関係ない」「だってアイツらが悪い」

それってね1番酷い言葉だよ。どんな言葉より無関心な言葉は退化を加速させる。

ねぇ、身に覚えはないかい?

学校、家庭、社会、世界、宇宙…ほらよく考えてみなよ。思い当たる節がキミにだってあるはずさ。

僕にも勿論ある。どんなに考えても、どうすることもできないことだからね。そういったことは、ほら、他の人に任せるのがいいだろう。


しかし、自分のたった一言で、誰かの人生は変わることもある。それをしないから、世界は色褪せていくんだ。逆に色褪せるのを促進する言葉だってあるね。ああ、キミ達みたいな人間にはそれは野暮だったかな? もう手遅れだもんね。今更キミらが何を言われたって変わることなんてできないし、意識もしない。


なに? 説教臭いって?

当たり前だろ、説教しているんだから。


言葉は兵器だ。

ミサイルと一緒だ。

いや、ミサイルなんかよりもタチが悪い。

言葉で傷付けられたら、その人の傷はなかなか癒えないし、死ぬまで誰にも気付かれないことなんてよくあるんだから。

気付かなければ、助けることもできない目に見えない傷は、きっと誰でももっている。持っているのに誰もそれを制御することができない。


と、ここまで僕が思ったことを行ったのだけど…異論は勿論認めるとも。僕の考えを、ただベラベラと喋っただけだからね。


ただ、これだけは譲れない。

もしも自分に少しでも良心があると思っているのなら…ちょっと世界をよく見聞きしてみなよ。他人の言葉を鵜呑みにするのではなく。自分の目で見て、聞いて欲しい。


だって、そんな人が絶滅危惧種になってきた世界なんだから。


だから大丈夫だって、キミはここで生きていても、僕は何にも言わないから。

安心しなよ。何10年もここでいきている僕だって、島地団地島のことを本当に理解できているかは、僕にだってわからないんだからさ。

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