第33話 十月第二月曜日 体育の日
朝一に入荷してきた菓子パンを、気だるそうに検品している店長である。
「大野君。地区運動会の競技用に頼まれた菓子パン百個……そろそろ配達した方がいいんじゃないか」
「えっ! あれは競技用だったんですか? 菓子担当は世話役のオッサンの昼飯だから、昼ごろ持って来るように言われたそうですけど」
「本当か? 運動会の昼飯にパンを喰うやつなんかいるのか? 普通なら家族や近所で集まって弁当を食べるだろう」
「そうですよね……でも競技用なら、パン食い競争でしょう。昼飯を食べた後に、またパンを食べさせますかね」
「確かにそれも一理あるな……じゃあ、なんに使う菓子パンなんだろう? もう一度確認した方がいいかもしれないぞ」
「ちょっと聞いて来ましょうか?」
「そうだな……聞き間違いだったら大変だからな……」
大野君は、耳の穴に小指をねじ込むと、品も無く耳くそをほじりながら担当者を捜すために事務所を出ていった。
しばらくすると、何やら階段の下から大笑いしながら、駆け上ってきた。
「分かりました。やっぱり世話役が食べるパンで良かったんです」
「昼食だったのか。しかし……寂しい世話役への待遇だな」
「それも違います。昼食ではありません」
問答のような、やり取りを楽しんでいる。
「ちゃんと説明しろよ」
考えるのが嫌いな店長が切れかかっている。
「なんか昼の特別イベントとして【世話役対抗パン大食い&早食い競争】をするのだそうです」
「大食いと、早食いがセットの競技か? フードファイターか……」
「なんでも、五人の世話役で誰が一番早く二十個のアンパンを食べきれるか競うんですって……負けたら実費でパン代を払わされるそうですよ」
心底嬉しそうな大野君である。
地区行事の度に、アレコレと無理難題を言ってくる世話役五人衆が嫌いなのが顔に出ている。
「しかし……世話役って、みんな年寄りばかりだろ?」
「平均七十歳くらいですかね……」
更に、三回、いや四回は頭をひねった店長である。
「どんな人生を送ってきたら……地区の人に、そんなに嫌われるんだろうな?」
「
「
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