第48話 自虐自爆?
でも、話はこれで終わらなかったんだ、しんみりした空気を読まずに、ボクとしては信じられない事を言い出してきた人物が居るんだ。
この事は、多くの人が予想していたんだ。ボクと”その人”の事を良く知っている、テッサとセレナ師匠は”断言”していたし、あまり知らないルイズやモンモランシーもそんな事を言っていた気がする。そして、”その人”の事を殆ど知らない、キュルケやミコトも同じ様な事を言っていたかも知れない。
「ジョゼット、本当にレーネンベルクを出て行くのか?」
「えっ? はい」
夜中近くになって、荷物を整理している最中にボクの部屋にやってきたのはノリス兄だったんだけど、どう考えても事情を理解していないよね?(理解したくないのかな?)
「あの、ノリス様?」
「どうしたんだ、何時も通りに話して良いんだぞ?」
「ノリス様・・・」
今日のノリス兄は、駄目だね、ノリス様は特にボクの気に障る存在に思える。何故かって考えると、うん、”妹離れ”出来ていない兄そのものと言った感じだからかな? テッサもライルもミコトだって、きちんと自分の道を見つけたと言うのにこの人は何をやっているんだろうね?(さっきボク自身もその一歩を歩み始めた積りなのにね)
「そうだ、ジョゼット、お前さえ良かったら私のお嫁さんにならないか?」
この言葉は色々な友人達が予想した通りの物だったよ。多分いきなり言われたら思いっきり混乱したと思う。ノリス様もボクも同じ位大好きなテッサは、多分ボクがノリス様と結ばれる事を考えて自分を納得させているんだと思うし、だからこそレーネンベルクを離れる事を選んだろうね。
客観的に見て、ノリス様は最上級の男性だと思うよ、家柄、容姿、能力、そして情の深さ、どれをとっても文句を付けられる人間は居ないだろうね。もしかすると、ボクと言う間違った愛情の注ぎ先が無かったらセレナ師匠やその他の女性と結婚していてもおかしくはなかったよね?
だけど、ボクには分かるんだ、ノリス様にとってはボクは”庇護すべき妹”でしかないと言う事がね。証明する事は簡単だよ、そう、今からやってみせるんだからね。
「ノリス様、落ち着いて話しませんか? 少し散らかっていますが、そこなら大丈夫ですからお座り下さい」
「あ、ああ?」
普通に眠る為に、ベッドの上だけは何も置いていなかったのは当然なんだけど、女性の部屋に夜訪ねて来て、普通にベッドに2人で腰を下ろす事は多分極めて親しい間柄か、”家族”の間だけ許される事だって分かっているんだろうか?
「身体を動かしたせいかもしれませんが、暑いですね? 湯浴みしたばかりなのに、少し汗をかいてしまいました」
あ、しまった、上は着けていなかったんだ。まあいいや、少しは成長したと言っても、悲しいくらい小さいしね。(この人には赤ん坊の頃におしめを替えられた事もあったらしいし)
そう自分に言い聞かせて、思い切ってシャツのボタンを外していったんだ。そして、ちょっとだけ成長したふくらみが顕になる直前で、耐えられなくなったのかノリス様がシーツを剥ぎ取ってボクの肩に掛けてくれたんだ。予想通りだったけど少しだけ悲しかったよ、ほんとに少しだけね?
「お前、何やってるんだ、そんな娘に育てた覚えは無いぞ!」
「ノリス兄、試す様な事をしてごめんなさい。お似合いの女性とお幸せになる事を、妹として祈っています」
「くっ! ジョゼット!」
自分の失敗を悟ったノリス様だったけど、その姿を見ている事が出来なくって、ボクはそのまま自分の部屋から逃げ出しちゃったんだ。荷物の整理は大体済んだから構わないけど、今晩は何処で眠ろう? ミコトの客室で慰めて貰おうかな・・・。(うん、悲しくは無いよ、だってボクには分かっていた事だったから)
===
最後の最後で色々疲れたけど、翌朝は普通に見送られて屋敷を後にしたんだ。生まれてから殆どに期間を過ごした場所なのに特に何も感じなかったのは、この日を予想していたからなのか、学院で過ごした日々のせいなのか、この国中を旅した経験がそうさせるのかな?
一応、移動は列車を使うし、国王陛下にも挨拶する必要があったから、王都経由でガリアに向かう事にしたんだ。何故か王城で色々あったんだ、ペンダント一個位は構わないけど、ミコトがマジックアイテムの調整の為に暫くトリステインに残ると言い出したのは意外だったよ。(だって、ガリアにはお姉さんが居るんだし、ボクにとっては始めての国なんだからちょっと心細かったんだ)
運良く、ガリアから帰って来ていた、外交官の人達と一緒にガリア入りする事が出来たんだ。キアラさんは、近衛から人を出すべきだって言っていたけど、クロディーというお姉さん(小母さんと言っちゃいけない年齢だと思うよ?)に丸め込まれたんだ。
ボクが外交官の一団に潜り込めたのは、偶然と言う訳じゃなくて、最近は国同士の交流が盛んになって来たからという話もクロディーさんから聞いたんだけど、この女性って異常に色々な話に詳しいんだよね。ボクが誰かも直ぐに見破ってしまうし、ミコトの話まで知っているんだから。(そして、何故かボクはクロディーさんに気に入られたみたいだったよ?)
ガリアに入れると、列車の乗り換えで降りた駅でイザベラさんが迎えに来ていてくれたんだ。ソローニュ候の差し金らしけど、状況が分からない状態で、シャルロット姉様と同じ顔の人間がふらふら歩き回るのはちょっと無用心過ぎると言われてしまえば、逆らう事も出来なかったよ。(ソローニュを案内して欲しかったんだけど、それもおあずけだった)
大公領のブロワ城では、妙に懐かしく感じるお母様、そして顔と髪の色はそっくりなシャルロット姉様(何故かボクよりちょっとだけ背が高くて、ほんのちょっとだけ女性らしい身体つきだったのは納得が行かないよ、双子なのに!)が出迎えてくれた。
「お帰りなさい、ジョゼット」
「はい、ただいま帰りました、お母様!」
「お帰り、そして始めまして、ジョゼット」
「ただいまです、シャルロット姉様。あの・・・」
「どうしたの、私達双子の姉妹なんだから遠慮はいらないわよ?」
「どうしたら、お姉様みたいに成長出来るんですか?」
「えっ?」
「もう少しで良いから、女性らしくなりたいなって・・・」
「ジョゼット、私程度を目指しちゃ駄目! 目指すならあれ、可能性はあるわ!」
「はい、お姉様!」
「シャルロット、貴女、婚約発表してから変よ、母親の胸を指して何を言い出すの!」
何やら事情は不明だけど、シャルロット姉様も色々苦労しているらしい、ボクと違って髪は長くてドレスの似合うお嬢様に見えるけど、意外に面白い人なのかも知れないね。でも、姉様がこの程度なら、殆どまっ平らな胸で男性を誘惑しようとしたボクは・・・? そっちを考えちゃ駄目だよね、お母様の体型を目標にしなきゃね!
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