第42話 女心?
セレナ師匠の提案はボクにとって魅力的だったけど、目の前に迫ったゲルマニアとの戦争を避ける訳には行かなかったんだよね。ボクには良く分からないんだけど、ゲルマニアとトリステインは結構仲が悪いんだ。
ボクがまだ小さい頃には、レーネンベルクまでゲルマニアの軍隊がやってきた事があったらしいよ。ただ、その軍隊自体はスティン兄が率いるレーネンベルク魔法兵団にあっさりやぶれさっちゃったんだから、ボクが詳しく事情を知っている筈もないんだ。
文字通り生き証人のライルはその時の事を殆ど喋らないし、今のゲルマニアについてよく知っているキュルケも思い出したくない事が多いらしいんだよね。変な劇とかも見る機会があったんだけど、あのスティン兄が”英雄”なんて呼ばれている時点で、眉唾物なんだよ。(学院でもその劇を見たっていう生徒は意外と多いんだけど、本人が目の前に居ても気付かない位脚色されているんだからね!)
そんな訳で、ボクのゲルマニアに対する感想は、迷惑な隣人と言った所なんだけど、ライルのお母さんを殺したり、キュルケを酷い目にあわせた事だけは許せないと思う。ライルやキュルケがゲルマニア皇帝とかに憎しみを抱いているんだったらそれなりの事をする覚悟はあるけど、2人とも優しすぎるんだよね。
「ジョゼット、悩み事があるなら相談に乗るわよ?」
「あ、うん、ボクの周りには”良い人”がって、うぇ!!」
「きゅい!」
「テッサと、イルククゥさんでしたよね? 何時の間にってどうやってココに?」
「勿論、約束を守る為に来たのよ、シルフィードに乗ってね」
一応、ココは軍艦?の中になるのかな、今はゲルマニアの宮殿に向かって飛行中なんだけどね。(オストラント号っていうかっこいい名前なんだけど、遠くから見ると結構可愛い形なんだよ)
「そっか、うん、ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
「イルククゥさんももしかして、手助けしてくれるんですか?」
「もちろんなの?」
うーん、見かけより軽いと言うか子供っぽいのかな? 前は習慣の違いかとも思ったんだけどね?
「イルククゥさんって、もしかして、ガリアの方じゃないんですか?」
「きゅい?」「ぷっ!」
「なんで、テッサが笑うのさ?」
「あのね、秘密にしてたけど、この子が”シルフィード”なの」
「?」
テッサが説明してくれたんだけど、テッサの使い魔シルフィード=イルククゥさんなんだって、風韻竜という特殊な竜族なんだって、イルククゥと言うのは本名らしいけど、なんで本名を偽名にするんだろうね?(でも、こっそり見ちゃったアナベラさんが本当は青い髪だったから気のせいだったのかな?)
「事情は分かったけど、どうして隠したの?」
「別に私が隠すことにした訳じゃないけど、そうした方が良いと思ったからかしら」
全然意味不明だけど、もしかして、ボクに関係があるのかな?
「じゃあ、どうして隠すのを止めたの?」
「うーん、その必要が無くなったから? そうね、落ち着いたら”彼ら”を紹介するわね」
うーん、謎が深まるばかりだよね。あっ、あっちでは、コルネリウスさんがクリシャルナに怒られてる! どう見ても緊張してガチガチだったからな?。この戦争自体がコルネリウスさんをゲルマニア皇帝の座につける為の物と言えなくも無いらいいから、緊張するよね?
===
「ジョゼット、準備は良い?」
「はい、し、セ、副隊長!」
「貴女とテッサには、コルネリウスとクリシャルナさんと一緒に、宰相に当たってもらうわ」
「予定通りですね?」
「ええ、エルフが居る確率が高いから貴女でも注意が要るわ」
「はい、皇帝の方は、本当にルイズとアキトだけなんですか?」
「そうね、その辺りは、陛下のにお考えがあるようね。本気で生け捕りにする積りみたい」
生け捕りのところは声を潜めているんだけど、ボクとしてはルイズの方が頼りにされているみたいで、不満なんだよね。さっきの”揺れ”も今こうして悠々と飛んでいられるのもルイズのお陰と言うのが、もっと不満なんだ。
「まあ、露払いは特殊部隊が引き受けるから、貴女はコルネリウスをお願いね」
「はい! でも、コルネリウスさんって守り甲斐が無いですよね」
「そう? あれで、結構可愛い所もあるのよ」
「可愛い?」
「ええ、貴女も大人になれば分かるわ。大人の女性にね?」
はっきり言って、ボクが女性として振舞う以外で女性になれるかと言われると、自信が無いよ! そんなボクの心配を余所にセレナ師匠は、さっさと隊員の皆の所に戻っていってしまった。そう言えば、セレナ師匠はテッサに一言も話しかけなかったよね?
「テッサ、セレナ師匠が結婚したって聞いた?」
「そうなの?」
「うん、特殊部隊の隊長さんとだよ」
「ふーん」
「テッサって、セレナ師匠の事が嫌いだった?」
「ううん、ちょっと邪魔だっただけ・・・」
うーん、女心と言うのが分からないよ! (これって女性として致命的?)
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