第3話温泉のある宿3

 風呂は狭くなかったが、なにか閉塞感がある

たふりと重たい湯が波だったような気がした。

 友人は、奥にある曇りガラスを見ている。

「早くビール飲もう」と言って湯から洗って体を洗った

「あのさ、言いたくなかったんだけど、あれ見て」

角に三角のごみ入れがある、私のほうは空だったが友人のほうを見て

 息をのんだ


漆黒のうずまき、うずを巻いた蛇の用に見えた。

 髪の毛だが単なる抜け毛ではなくて異様に長い髪をざっくりと切ったような感じで何重にも重なっている

それだけが真新しい三角コーナーに入っている。

 きれいに長さがそろい渦巻きも丁寧に作られたように見える

 明らかに人間のものだ、それも生々しく真新しい

「ごめん、我慢できなくって」友人は言った。

 この友人はこういう時あまり人に言わない

だから彼女が無口になると怖くなる 

でもこれは明らかに現実の存在だ 

「なにこれ」かなりの長さで漆黒過ぎて紫に見える

 こういうところでこんなに長い髪を切るものだろうか

考えてもわからない、とにかく部屋に戻らなくては

 胸苦しい思いで体を洗っていると脱衣所のガラスに人が映っている

 長い髪でかなり太っているのはわかる、妙なのは顔でガラスを開けようとしているようにみえる。

 目をそらして言おうかどうか考えた

もう一度ガラス戸を見るともう誰もいなかった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る