太陽がサンサン


「今から教室へ入るが、うちのクラスはちょっと問題でな。まぁすぐ慣れるだろうが、とりあえず自分の身は自分で守ることだけ注意しておいてくれ」

「は、はぁ」


犯罪者しかいないんだからそのへんは覚悟してきているつもりだ。というか自分も犯罪者だし。

自分の身は自分で守る……と、改めて言われるとちょっと怖い気もするけど、なんかあったらそんときはそんときだ。


「それと俺のことは新参でいい。さん付けすると新参さんで、太陽がサンサンみたいに聞こえるからな」

「わかりました」

「……今のは笑うところだぞ」

「知ってます」


思い切りスベった新参は、ゴホンッと咳払いをして教室のドアを開けた。

残念だったな新参、君の太陽がサンサンは咳払いくらいじゃ払えないぜ……?

てか普通に新参って呼んでも兄さんっぽいよね??普通に兄貴だと思われるよね??

そして新参がスベったという事実が今更じわじわ面白い。笑えてくる。ニヤニヤが止まらない。きっと今のあたしの顔は物凄く歪んでいる。

おおっと新参がこちらを氷のような視線で睨みつけている。ほっぺたが若干赤いが照れているのか!?女子ウケ狙いか!?

そろそろ本気で殴られそうなのであたしは大人しく新参の後を追って教室へ入った。


──そこには想像をはるかに超えた混沌があった。


教室内を浮遊する生徒、謎の球体、何故か白衣を着てフラスコを振っている幼女、そして謎の狼……。


「おいお前ら席つけー、新入生だ」


新参の一声でゾロゾロと席につく生徒達(と狼)。興味無さそうに寝る体勢に入るものもいれば、ジロジロとこちらを観察しているような者もいる。

ちょっと男子ぃー、あんまジロジロ見ないでよ恥ずかしいじゃないっ!!

まぁ冗談はさておき。


「今日からこいつが、このクラスで一緒に訓練することになった。ほら、自己紹介しろ」

相良蒼葉さがら あおば。17歳。性別女。身長153cm、能力は鉛。猫派で、体重が…」

「おっと待てそれ以上言うな殺すぞ!?」


えっ、自己紹介しろって言われたよね?あたしまだ自己紹介してないよね?

急に後ろの方の席のだるそうに足を組んでいる男──青い髪で目つきが悪い──が何故かあたし、の紹介を始めたんだよね?しかも当たってるね?てか何体重まで公開しようとしてんの?


「おい田原、駄目だろ。新入生に言わせることに意味があるんだから見えても勝手に個人情報漏らすな」

「新参、太陽がサンサン?」

「ぐっ、それも見たのか!?」

「いやぁ隣の新入生の彼女、プロテクト甘くてさぁ」


ニヤニヤしながら新参と会話する田原と呼ばれた人。そういう能力なのかだろう。そして新参は太陽がサンサンの件がバレてまた顔が赤くなっている。今にも頭から湯気が出てきそうだ。湯気出てきたら頭でお茶沸かしてやろう。


「太陽はもういい忘れろ!それと相良、お前の席そこだから。さっさと座れ。HR始めるぞ!」

「サンサン?」

「氷漬けにするぞ?」


おっとからかったら怒られてしまった。真顔だこれは本気で氷漬けにする気満々だな。

でも大丈夫だ、氷漬けにされても新参のサンサン太陽が溶かしてくれるさ。


顔の真横を氷柱が勢いよく飛んできた。


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