シンパシー・テレパシー
八面子守歌
0. オワリ・ハジマリ
第0話 発端〈ホッタン〉
入り口から見た夕暮れ時の教室の風景は、青春の一ページなんてお世辞にも呼べないような残酷なものだった。
オレンジ色の光に照らされた女の子が教室の真ん中で泣いている。
頬を伝う水の粒も、小刻みに震えている右手も、机の上が散乱している様子も、すべて悲惨な状況を物語っていた。
「……ひどすぎるな」
俺の声に驚いたのか、彼女は一瞬びくっとして顔をこちらへ向けた。目には大粒の涙を浮かべ、
茶色がかった黒髪、あどけなさが残っている童顔、すらっとしたスタイル――
俺は机の上に散乱している教科書類へ視線を移し、かける言葉を探す。
数秒の沈黙を破ったのは
「やなとこ……見られちゃったなぁ」
気が動転しているのか強がりなのかは分からないけれど、少し大きめの可愛らしい声が教室内に響く。その音はわずかに震えていて、手の震えが声に転移したかのようだ。
俺は言葉を選びながら慎重に言った。
「すまん。数学のノート、忘れたから取りに来たんだけど……大丈夫か?」
「そっか。ありがとう、大丈夫……大丈夫……大丈夫……じゃないかな」
えへへっと
「その教科書……あいつらにやられたのか?」
「あいつらって
俺はこくりと頷く。
「まぁ、多分そうだね」
「さすがにひどすぎるな。許されることじゃない」
「しょうがないよ。わたしはそれだけのことをしたんだもん」
俺は一息つく間もなく、言った。
「明日、
「やめて!
黄色い声が教室内に響き渡る。
「ごめん……。教科書は大丈夫じゃないけど、わたしは大丈夫だから」
「いや、でも……」
かける言葉が見つからない。俺は呆然と立ち尽くして、帰り支度をしている
自分の無力さを
「なにかあれば、いつでも話は聞くから」
教室を後にしようとしていた
「ありがとう、
寂しげな笑顔で一言だけ残し、ゆっくりと教室から出ていった。
一週間後にはクラス名簿から
* * *
約三年前の出来事がいまだに脳から離れないのは、よく利用する路線に問題があるのだろうか。
電光掲示板に表示された『
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